バフェットはなぜ、アップルを保有し続けているのか?
バフェットはアップル株の保有について、バークシャー・ハサウェイの「第3の事業」と呼んでいる。その保有評価額は今や約1,215億ドルにまで膨らんでいる。
バークシャーのフォーム13Fにアップルが初めて登場したのは2016年3月末だった。当時、その金額は約11億ドルに過ぎなかった。そこから段階的に買い増し、5年あまりで評価額は100倍以上に拡大し、バークシャーが保有する米国株の4割を占めるに至っている。
米国株ポートフォリオに占めるアップルの割合(2021年6月末時点・評価額ベース・四半期推移)
株価上昇によって保有評価額が跳ね上がったことで、バークシャーはアップルへ集中投資する形となっている。
少数の銘柄に資金を集中させるのはリスクが高いため、それぞれのポートフォリオ戦略に合わせ、アップルの保有数を減らすなど、ポートフォリオのリバランスを行うのが通常だ。しかし、バフェットはアップル株を保有し続けている。
アップルは世界で最も認知されているブランドの1つであり、卓越した顧客ロイヤルティを誇っているなど、他社にはない特徴を備えた企業である。しかし、バフェットがアップルを保有し続けている理由はそれだけではない。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが23日に発表した資料によると、2021年第2四半期におけるS&P500企業の自社株買い総額は1,988億ドルと、2021年第1四半期の1,781億ドルから11.6%増加した。これは、過去最高だった2018年第4四半期(2,230億ドル)に迫る水準である。
第2四半期の自社株買い金額をランキングするとトップ10社は次の通りである。10社の第2四半期の自社株買い合計額は850億ドルと、全体(1,988億ドル)の約42%に達している。
特筆すべきはこの10社の過去5年間における累積自社株買い規模である。累積自社株買い金額は10社合計で9,335億ドルに達している。
自社株買いトップ10社
アップルは、この第2四半期に256億ドルもの自社株買いを実施し、5年間の合計は3,000億ドルを超えている。
バフェットのポートフォリオを改めて確認すると、アップル以外にも、自社株買いのトップ10に入っているバンク・オブ・アメリカ(BAC)、チャーター・コミュニケーションズ(CHTR)を保有している。
企業の決算において手を加えることができる利益と異なり、キャッシュフローは操作しにくい。企業がいかに効率よくキャッシュフローを生み出すことができるのか、そしてそのキャッシュをどのように使うのか、これらを確認するのは投資する上で重要だ。
企業はビジネスで稼ぎ出したキャッシュを配当金の支払い、自己株式の取得、有機的なビジネスの成長へ向けた投資などに支出するが、そのキャッシュの使い方には「企業の姿勢」が表れる。
アップルは2012年から配当金の支払いを始め、2013年には自社株買いのプログラムをスタートした。以来、アップル株を保有している株主はアップルが稼ぎ出したキャッシュの分配という大きなメリットを受けてきた。
バークシャーはアップルからの年間配当だけで8億ドル近い収入があるという。バークシャーの「第3のビジネス」の大きな配当収入源の一つでもある。
バフェットがアップルを保有し続けている理由は、アップルのキャッシュを生み出す力とそれを株主に還元する姿勢にあるだろう。