新エネ車焦点で中国独自ブランドが有利、短期的な新車実需には疑問符も

 BOCIはここ2週間、投資家らと自動車セクターに関する意見を交換したが、その結果、投資家が関心を示しているのは、部品メーカーでもディーラーでもなく、完成車メーカーであり、こうした傾向は年初からの株価パフォーマンスとも一致していると指摘した。その上で、セクター全体に関する最新情報と見通しを明らかにしている。

 完成車メーカーの中で投資家が注目しているのは自主ブランドを展開する長城汽車(02333)、BYD(01211)、吉利汽車(00175)の民営メーカー3社。傘下の新エネルギー車メーカー、広汽埃安新能源汽車(AION)のスピンオフを計画する広州汽車集団(02238)を除けば、国有メーカーに関する投資家の質問は限定的だったという。

 中国の自動車業界は36カ月連続のマイナス成長を経験した後、周期的な回復局面に入り、中でも新エネルギー車(NEV)の販売が予想以上に好調。2021年下期以降、自主ブランド3社の株価は明らかにセクター全体をアウトパフォームし、バリュエーションはいずれも過去最高水準に達した。ただ、現在株価にはやや割高感があり、上値を追う段階にはないという点で、投資家らの見解はほぼ一致しているという。一方、一部のヘッジファンドは空売りのタイミングを検討しているもようだ。半導体不足は引き続き、セクター全体にとって打撃だが、短期的にはミクロ経済環境の弱さから、自動車実需に関して懐疑的な投資家も少なくないという。

 一方、BOCIは長期的に見ても、新エネ車ブームは新たな自動車需要を喚起しているわけではなく、多くはガソリン車(内燃車=ICE車)からの買い替え需要だと受け止めている。また歴史的に見ると、自動車産業の各サイクルの頂点においては、市場が認識した新たなロジックが高評価を支えてきたと指摘。今の状況下では以下の2点が長期のロジックになり得るとした。【1】自動車メーカーのビジネスモデルが伝統的な製造業の収益構造から、機能ソフトウエアのアップグレード課金に変わり、これが新たな収益成長の原動力となる、【2】電動化・スマート化という流れが、自主ブランドメーカーのシェア拡大や高級化につながる。

 うち【1】の点では、この先、標準装備となる可能性が高い自動運転(AD)システムにとどまらず、スマートコクピット機能の開発力が収益力を左右するとの見方。スマートフォン業界と同様、少数のトップメーカーだけがソフトウエア課金で採算を確保するとみる。一方、【2】に関してはフォルクスワーゲン以外、BMWやメルセデスベンツなどの高級車から日本車に至るまで、中外合弁ブランドは一様に、EV化やスマート化の点で中国勢に大きく後れを取っていると指摘。長城汽車、BYD、吉利汽車などの従来型メーカーか、理想汽車(02015)、小鵬汽車(09868)などの新興勢力かを問わず、中国独自の自主ブランドメーカーを有力視している。