レバレッジは「危ない!」のか、「有利!」なのか?

 レバレッジとは、借り入れを行って投資のポジションを膨らませる行動のことだ。先物やオプションを使うことでもレバレッジを効かせることができるが、これらは背後で実質的に借り入れが存在している。

 レバレッジに関しては、一方で「危ない」、時には「不健全だ」といったイメージがあり、他方で「効率的」或いは「有利」といった印象を持つ向きもある。

 長期投資や資産形成を語る文脈では、レバレッジを伴う運用を危険視する見方が優勢のように思う。例えば、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)ではレバレッジを使った運用商品を除外している。また、証券会社の社員に対する社内ルールにあっても、株価指数先物の取引やレバレッジ型の投資商品を社員が利用することを禁止することが一般的だ。レバレッジを使った取引は「相場に関わりすぎ」だと考えられているようだ。

 マネープラン全般や資産形成を説く書籍などでも、借金のリスクや不利を強調するものが多い。生活の破綻や、運用の失敗には、しばしば借金やレバレッジが絡むので、これらの2つを遠ざけておくことが無難だという感覚は理解できる。但し、住宅ローンに関してのみ妙に寛大な本がしばしばあって、一貫性を欠くと感じる場合がある。

 一方、ビジネスの世界では、借り入れによる資金調達は当たり前の行為だし、現金を抱え込む経営よりも、適度にレバレッジを使う経営の方が株主に好まれるケースが多い。

 レバレッジに対するさまざまな見方を統一的に理解するにはどうしたらいいのだろうか。

 以下のような、「良い借金の3原則」を考えてみた。

【良い借金の3原則】

  1. 金利よりも有利な資金使途がある借金
  2. リスクが過大にならない借金
  3. 金利がマーケット水準から大きく乖離していない借金

 採算に乗るビジネスの資金を、市中金利にごく小さなスプレッドで借りられるなら、企業にとって「良い借金」だろう。現実的には、1番と3番を企業が主に考え、2番を銀行がチェックすることになりそうだ。

 個人の場合は、先ず、金利が十数パーセントにも及ぶ短期のローンは避けた方がいいし(3番)、住宅ローンの利用は、住宅の価格が投資として妥当なものかどうか(1番)と、ローンの額が個人の経済力に見合っているか(2番)が主なチェックポイントになる。

 不動産投資は、ローンによるレバレッジを利用しやすいことと、個人が低利で借金できる数少ない機会であることから、「結果的な不動産長者」を過去に多数生んできた。しかし、1番と3番のチェックは重要だと強調しておく。

 尚、不動産購入の可否は、(A)「全額キャッシュからの投資としての評価」に(例えば株式投資と比較してどうか?)、(B)「金融機関に支払う金利(手数料も含めて計算する)のスプレッドの損失」を加味して行うべきものだ。「ローン金利よりも実質家賃利回りが高いからOK」と即断するのでは不十分だ。

 付け加えると、資金に余裕がある場合に「レバレッジ=借入」を利用するのは、借入金利の市中金利に対するスプレッド部分の費用負担が無駄になるので、リスクゼロで市中金利以上の利回りで運用できる機会である「借金の返済」は、逃すともったいない資金運用だと考えることができる。(住宅ローン減税などを考慮しない一般論として、スプレッド部分が損だという原則論だ)格言にまとめるなら「返済に勝る運用なし!」だ。

 では、資産運用におけるレバレッジはどうなのか。