複数アセット・クラスのレバレッジ運用
レバレッジ利用のもう1つのカテゴリーとして、機関投資家向けならヘッジファンドが古くからあるし、個人投資家向けにも近年「複数のアセット・クラスに投資してレバレッジを使うファンド」が登場している。
例えば、「株式」と「債券」の間に利用できるリターンの相関関係があると考えた場合に、株式と債券を最適な比率に組み合わせた上で(例えば、長期債を株式の3倍、など)、この組み合わせのトータルリスクの大きさが商品として利用しやすいものになるように、レバレッジを掛けた運用を行う方法が考えられる(実際に商品が存在する)。
アセット・クラス間の相関係数は常に一定のものではないが、利用が上手く行くと、単独のアセットでは得られない高いシャープレシオが得られる。
一方、レバレッジを使わずに、例えば「株式1:長期債3」のような配分を実現しようとすると、資金額に対して25%相当の株式エクスポージャーしか持つことができない。主たる収益源である株式の保有に対して「物足りない」と思う投資家は少なくあるまい。
この場合、「株式1:長期債3」の比率で投資して、例えば4倍のレバレッジを掛けると、シンプルな株式100%の運用と同じくらいの株式エクスポージャーが得られる。残る問題は「株式のリターンがマイナスになる場合に、債券のリターンがプラスになって、これをカバーするか否か」だ。
個人的にも、この種の運用が可能なら是非やってみたいと思うが、株式と債券の先物のポジションをコントロールするオペレーションは、個人で行うには些か複雑だし、資金量が足りなかったりする。こうした場合に、望むようなエクスポージャーを作ってくれるファンドに投資する価値が生まれる。
こうした事情が、「○倍×分法」のようなネーミングのファンドの商品価値だ。専門家が大きな資金を集めて運用する「ファンド」ならではの価値だと言える。
もちろん、商品の仕組みはそれなりに複雑だし、期待の相関関係が「常に」上手く機能するとは限らない。場合によっては、株式と債券の両方で同時に損失が膨らむ可能性もある(例えば、スタグフレーションで、金利の上昇と景気の後退が同時に起こるような場合)。加えて、「商品」を利用する訳だから、商品としての手数料や、先物利用の際の経費に関しても判断が必要だ。諸々の仕組みが理解できない投資家には勧められないが、分かる人には「常にではないとしても」魅力のある投資対象になり得る。
こうした複数のアセットを組み合わせた「複数アセット・クラスのレバレッジ拡大」といった趣の運用も個人投資家の運用対象に考えられるといって良かろう。
結論として、個人投資家は、レバレッジを「常に避けなければならない」という訳ではないと考えていいだろう。判断の基準は、「良い借金の3原則」に立ち返るといい。