習近平政権の“規制ラッシュ”が止まりません。今度の標的は芸能界。法外な報酬を得る女優の脱税に対して巨額の罰金を科し、不透明な業界の慣習、行き過ぎた商業主義、過熱する追っかけ現象や肥大化するファンクラブ制度などにメスを入れようとしています。
いま中国芸能界で起こっているこの現象は何を意味するのか。今回、読み解いていきます。
人気女優の脱税による51億円罰金は「始まりの始まり」に過ぎない
“規制ラッシュ”が芸能界を襲撃する上で、象徴的な事件となったのが、女優・鄭爽(ジェン・シュアン)の脱税事件。「陰陽契約」と呼ばれる、書面の契約と口頭の契約で契約料が違う二重契約を利用した脱税が上海税務局の調べで発覚し、2.99億元(約51億円)の罰金と追徴税が科されました。
本件は国レベルで重視され、国家税務総局による指導と監督の下、天津市、北京市、浙江省、江蘇省の税務局が上海当局に協力し、4カ月の調査を経て立件されました。
人気女優の脱税事件と言えば、2018年、范冰冰(ファン・ビンビン)が8.84億元(約146億円)の罰金・追徴税を科せられています。
鄭爽と同様「陰陽契約」を利用した脱税行為でしたが、范冰冰は国民的女優であり、かつ科された金額も今回の約3倍。事件がもたらした衝撃度とニュース性としては前回のほうが断然大きかったわけですが、いま中国で何が起こっているのか、今後、中国のエンターテインメント市場にどのような影響を及ぼすのかという観点からすれば、今回のほうが数倍重要。3年前は単発の重大事件&特大ニュース、今回は、一連の事件や問題の発展につながる「始まりの始まり」というのが私の見方です。