オンラインゲーム規制は習近平政権の特徴を反映している

 ここからは、『通知』が何を意味、示唆しているのかを考えていきます。

 結論から言えば、習近平新時代の方針や特徴を如実に体現しているというものです。これまでも、IT企業教育産業などを扱ったレポートで検証してきましたが、習近平(シー・ジンピン)総書記率いる中国共産党指導部には、中国経済を持続的、安定的に発展させるためには、市場の規則や秩序を構築し、企業側にしかるべきルールや基準を要求することで、労働者、消費者、有権者としての人民、特に中低所得者層の権利と利益を保護するという意識が非常に強いです。

 ゲーム業界に関する今回の『通知』に関しても、規制強化の対象は企業側ですが、当局が究極的に保護したいのは人民側の権利・利益なのです。もちろん、企業とて人民から成り立っているのであり、企業の業績が悪化すれば、人民の権利・利益を損ない、経済成長にヒビが入ることで、中国共産党自身の正統性も危うくなるリスクをはらんでいます。

 党・政府指導部は、このリスクを百も承知の上で、それでも、義務教育段階の学習塾を非営利化したときのように、当局として何らかの措置を講じなければ、子供たちの健全な成長に危害が及び、深刻な社会問題と化す、結果的に中国経済の持続的、安定的成長を阻害する根源的な脅威になり得ると考えて、今回の措置に踏み切ったというのが私の分析です。

 とはいえ、教育産業の回でも言及したように、中国では「上に政策あれば、下に対策あり」。上記の「親の身分を借り、成人として“実名登録”する未成年者」の例にも見られるように、サービス提供側も利用側も、あの手この手を使って、暗黙の了解で互いの欲求を満たそうとするのは必至です。

 中国では「抜け道」「灰色地帯」が常態化しています。当局はそれを分かっているからこそ、多くの機関投資家が「やり過ぎ」「常軌を逸している」と嘆くほど驚嘆な規制強化を施しているのだと私は考えます。