未成年者へのオンラインゲーム規制はアルコール、喫煙禁止と一緒?

『通知』を読みながら、私は中国本土の大学で教べんを執っているときのことを思い出しました。学部生、大学院生を含め、学生(主に男の子)が勉学に集中しない、宿題や試験準備がおろそかになっている最大の原因がオンラインゲームに対する中毒的、熱狂的ともいえる依存だったからです。これは、彼らが未成年の頃から蓄積してきた生活習慣でした。

 中国の大学は全寮制ですから、ルームメイトへの影響は必至で、授業時間以外は4人一部屋の空間に閉じこもり、ずっとゲームをしている。また、週末以外は22時消灯、門限もあるので、その前に外出し、オンラインゲームを提供するマンガ喫茶のような場所で朝まで過ごす学生もいました。

 これでは何をしに大学に来ているのか分からないし、何より心身の健康上よくないと判断した私は、仲のいい教え子たちに声をかけ、一緒にランニングする習慣を身に付けさせたこともあるほどです。

 私自身はオンラインゲームをしたことがありませんし、中国と日本を含めた海外の間で、ユーザーののめり込み具合、社会的影響という意味で、どのような相違性が見いだせるのかも定かではありませんが、少なくとも中国の若者たちの「ゲーム依存症」を眺めながら、異常性の一端は垣間見た思いです。親御さんたちもとても苦労されていました。

『通知』からは、このような現状にメスを入れようという当局側の意志が如実に反映されています。

「週3時間+アルファ」を適当な時間と受けとるか、短すぎると受けとるかは人それぞれでしょう。そもそも、当局が主導してこのような規定を設けること自体「人権侵害」だという意見も大いにあるでしょう。この点を中国政府の知人と話をしていると、次の答えが返ってきました。

「日本は未成年者のアルコール飲酒や喫煙を禁止している。アルコールやたばこを提供する側に未成年者に売らないように求めている。未成年者の中には未熟で、社会の道理や規則を守らない人間も多い。だからこそ、大人側に要請する。中国が未成年者のオンラインゲーム使用に制限を加える、そのために企業に対する監視を厳しくするのも同じ考え方、論理だ」

 この中国官僚の比較は的を外したものではないと思いますし、「依存症」や健康的成長の阻害という意味では、当事者だけでなく、社会全体の問題にも発展しかねない、故に政府として法制度・ルールを強化するということなのでしょう。

 実際に、今回の「新規制」は新しいものでは決してありません。

 市場や世論であまり議論されていませんが、今年6月1日から施行されている『中華人民共和国未成年者保護法』は、「オンラインゲームサービスの提供者は、対未成年者へのサービス提供に時間的制限を設けるべきであり、毎日の22時から翌朝8時の間、サービスを提供してはならない」と規定しています。

 また、2019年、今回と同じ国家新聞出版署が発表した『未成年者のオンラインゲーム依存を防ぐための通知』は、オンラインゲーム企業は未成年者に対して、休日は1日3時間、他の日は1日1.5時間を超えてはならないと規定しています。

 これに対して、「多くの親御さんたちは、我々が規定した基準は依然として甘く、より厳しく短縮してほしいという意見を反映してきた」(国家新聞出版署責任者、8月30日)経緯があり、今回の措置に踏み切ったということでしょう。

 2年前と今回の『通知』タイトルを比較すると、後者に「切実に」「より一層厳格に」という文言が入っているのはそのためです。繰り返しになりますが、昨今になって突然降ってきた「新規制」などでは決してないのです。8月30日というタイミングで公表した理由は、新学期直前という時期的要因以上でも以下でもないでしょう。