利益を出すウラワザ

ひな:わたしたちみたいな少額で投資している人は、損をしちゃうってこと!? なにそれ!?

しんた:ちょっと待って。そう思うよね。だから父ちゃんが使っているウラワザを聞いてきたよ。

しんた父:「彼らの動きを利用して、個人投資家が儲かるケースもあるんじゃないか」っていう、画期的なコメントを書いてるの、ブログで見つけたんだ。

しんた:え!? なにそれ!

しんた父:リーマンショックの前後で、株も売られ、REIT(リート)も売られ、社債も売られ、一部の資産をのぞいて、みーんな売られました。

しんた:株価が大幅に下がったときだよね。

しんた父:「そのときに、投資しておけばよかった」って思うよ。当時、日経平均株価が7,000円、今は1万8,000円だから、これだけで1万1,000円の利益が出ているんだよ。

しんた:うん。でも、「たくさん資金を持っている投資家」が思い切って買っちゃえば、すぐに値上がりしちゃうんじゃないの?

しんた父:ところが、そうなってないんだ。日経平均株価は、リーマンブラザーズが倒産する前月の2008年8月、月末には1万3,000円あたり。これが、9月に1万1,000円台、10月に8,500円台となり、2009年2月には7,500円台まで下がる。

しんた:うっわー、大変!

しんた父:その後、2009年7月には10,000円台を回復するんだけど、本格的に1万1,000円台を回復するのは2013年の1月までかかる。

しんた:3年半もかかるの? リーマンショックからだと4年以上も?

しんた父:そう。そこに、二つのチャンスがある。一つは、2009年2月から3月にかけて。日経平均が8,000円前後のとき。もうひとつは、その後の3年半、1万円前後のとき。

しんた:そりゃ、結果を見ればそうだけど、もっとガンガン下がっちゃうリスクもあるよね。

しんた父:もちろん。だけど、そんなこと言ってたら、全く投資できなくなっちゃうから、ちょっと上がる確率が高くなったところで投資を開始してみる。

しんた:なんで確率が高くなるって分かるの?

しんた父:「たくさん持ってる投資家」って、みんなのお金を運用している銀行、生命保険会社、年金、など「機関投資家」って呼ばれる組織のこと。つまり、決算があり、日本の場合ほとんどは3月が決算月、9月が中間決算月になっている。

しんた:そうなんだ。

しんた父:組織は、大きい金額を動かしているから、「ルール」が設定されている。例えば、株なら、「日経平均が10%下がったら、自分たちのポートフォリオ全体の15%を売って損失確定しなさい」、とか。その「ルール」は、半期決算ごと、つまり、4~9月と10~3月で区切られているんだ。

しんた:狙い目は「機関投資家の決算」。

しんた父:そう。リーマンショックのとき、リーマンの倒産が9月の中旬だったから、「たくさん持ってる投資家」の大部分は、4~9月の「半期」が終わった10月に入ってから本格的に売り始めた。日経平均が10%下がったから全体の15%売り、日経平均が20%下がったから、全体の25%売り…。

しんた:そっか。「ルール」が二重にも三重にもなっているのね。

しんた父:一方で、海外の投資家はほとんどが12月決算なんだ。10月から12月中旬にかけて、売れるだけ売る、という現象が起きる。日本の投資家は3月決算だから、3月中旬くらいまでに、売れるだけ売る。

しんた:ん? 確か、2009年2月が一番安かったって言ったよね。

しんた父:そう。月末ベースなら2月末。日次ベースでは、3月10日。そこまでは、売れるだけ売る。その後、売る(というか、ルールで売らなきゃいけない)人たちがいなくなる。

しんた:だから2月末とか3月10日が安値?そんなに単純なの?

しんた父:まぁ、偶然かもしれないけどね。ただ…。

しんた:ただ??

しんた父:2015年の8月から9月にかけて起こったチャイナショックと呼ばれる下げ局面では、日経平均は9月29日に底値をつけて、その後年末まで徐々に上がっていくんだ。決算と無関係とは言えなくもない。こうして、「売りたくないかもしれないけど、売らないといけない大きな投資家」がたくさん売ったあとに、個人投資家のチャンスができるわけだ。

出所は、Bloombergより楽天証券作成
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