しんた:高校2年生。
中学からお年玉のお金で運用をしているインテリ高校生。
クイズ研究部の部長

ひな:しんたの同級生。
クイズ研究部の部員

 

投資初心者の心得

しんた:まずは、投資信託(ファンド)をはじめるときの投資の心得3か条から。
その1:投資を開始するときに、「売り(利益確定の売りと損失確定の売り)」の基準を「決め」ておく 
その2.買うタイミングを気にしない! 緩やかに上がる資産を選ぶ
その3.リーマンショックのような暴落のあとは、思い切って投資する

ひな:その1は、前回教えてもらったね「ほったらかしは危険!?投資の利益を受け取るためにどうするの?」

「緩やかに上がる資産」を選ぶ

ひなその2「買うタイミングを気にしない! 緩やかに上がる資産を選ぶ」ってなに?

しんたなにをいつ、どうやって買えばいいの?で話したように、緩やかに上がる資産を選んで、つみたて方式で購入すれば、損する可能性は低くなる。タイミングはほとんど関係ない。

ひな:価格が下落しても「ラッキー」と思うんだよね。 

しんた:つみたて投資では、基準価額が下がれば、購入数量(口数)が多く買えるからね。
だけど、ひなちゃんが例えば明日からつみたて投資を開始する。その直後に相場が下落して、しばらく回復しない場合にどうなるか…。

ひな:ど、どうしよう!?

しんた:相場が回復するまでは、赤字運営になっちゃう。つみたてても、つみたてても、毎月赤字。いずれ相場が回復したときには、黒字になるから大丈夫なんだけど、あまり気持ちのいいものでもない。

ひな:なるほど、それで「緩やかに上がる資産」ってわけね。途中の評価損が大きくなる可能性が低いから。

しんた:そう。「緩やかに上がる資産」。

ひな:・・・「緩やかに上がる資産」?

しんた:だよね(笑)。例えば、投資信託の場合、原則、運用方針が変わらないから、過去の実績を見て、基準価格が安定的なものをみるんだって。一般的に、先進国の債券の値動きは安定的っていわれる。特に国債や社債。あとは、過去の値動きが安定しているインデックスファンドを探す。

ひな:インデックスファンドは教えてもらったよね。(〔8〕インデックス運用、アクティブ運用ってなに?

しんた:おお! ひなちゃん。成長しているね。インデックファンドはいろいろあるから、なるべく手数料が低いものを選ぶといいかも。

ひな:ほー! しんたくん、今日はいつにもまして賢い。

しんた:でしょ~。

「リーマンショックのような暴落のあとは、思い切って投資する」

ひな「リーマンショックのような暴落のあとは、思い切って投資する」ってどうゆうこと?

しんた:これはね、父ちゃんに教えてもらったことなんだ。

しんた父:しんた、投資をやろうとしているみたいだな。

しんた:勉強し始めたところだよ。でも、高値で買いたくないし、値下がりのタイミングは分からないし…。まだちょっと怖い。

しんた父:俺もなあ。失敗したことがあるなあ。

しんた:なになに!?

しんた父:ソニーかなんかの株を持っていて、いい決算が発表されて、翌日大きく値上がりすることを期待したんだ。

しんた:大きく上がりそうだね。

しんた父:ところが、翌日ソニーの株価は下がってしまった。それで、思わず売ってしまったんだ。

しんた:なんで?

しんた父:何かあるのかと思って。自分が知らない材料(情報)があったのかもって。

しんた:知らない材料?

しんた父:例えば、重大な欠陥が発覚したとか、海外事業の一部から撤退して費用がかさむとか。うわさでも株価は下がるときもあるからね。その時は、株をたくさん持ってた投資家が、自分が「決め」た水準に達したから、全部売っていたんだ。大量に買う人たちが出てきて、値上げが起きた。

しんた:それで売られて値下がりした。

しんた父:その通り。相場は、みんなが買えば上がって、みんなが売れば下がる素直で厄介なものだから。どうしても「たくさん持ってる投資家」に左右されるんだ。

しんた:そんなの、個人投資家が儲からないじゃん!

利益を出すウラワザ

ひな:わたしたちみたいな少額で投資している人は、損をしちゃうってこと!? なにそれ!?

しんた:ちょっと待って。そう思うよね。だから父ちゃんが使っているウラワザを聞いてきたよ。

しんた父:「彼らの動きを利用して、個人投資家が儲かるケースもあるんじゃないか」っていう、画期的なコメントを書いてるの、ブログで見つけたんだ。

しんた:え!? なにそれ!

しんた父:リーマンショックの前後で、株も売られ、REIT(リート)も売られ、社債も売られ、一部の資産をのぞいて、みーんな売られました。

しんた:株価が大幅に下がったときだよね。

しんた父:「そのときに、投資しておけばよかった」って思うよ。当時、日経平均株価が7,000円、今は1万8,000円だから、これだけで1万1,000円の利益が出ているんだよ。

しんた:うん。でも、「たくさん資金を持っている投資家」が思い切って買っちゃえば、すぐに値上がりしちゃうんじゃないの?

しんた父:ところが、そうなってないんだ。日経平均株価は、リーマンブラザーズが倒産する前月の2008年8月、月末には1万3,000円あたり。これが、9月に1万1,000円台、10月に8,500円台となり、2009年2月には7,500円台まで下がる。

しんた:うっわー、大変!

しんた父:その後、2009年7月には10,000円台を回復するんだけど、本格的に1万1,000円台を回復するのは2013年の1月までかかる。

しんた:3年半もかかるの? リーマンショックからだと4年以上も?

しんた父:そう。そこに、二つのチャンスがある。一つは、2009年2月から3月にかけて。日経平均が8,000円前後のとき。もうひとつは、その後の3年半、1万円前後のとき。

しんた:そりゃ、結果を見ればそうだけど、もっとガンガン下がっちゃうリスクもあるよね。

しんた父:もちろん。だけど、そんなこと言ってたら、全く投資できなくなっちゃうから、ちょっと上がる確率が高くなったところで投資を開始してみる。

しんた:なんで確率が高くなるって分かるの?

しんた父:「たくさん持ってる投資家」って、みんなのお金を運用している銀行、生命保険会社、年金、など「機関投資家」って呼ばれる組織のこと。つまり、決算があり、日本の場合ほとんどは3月が決算月、9月が中間決算月になっている。

しんた:そうなんだ。

しんた父:組織は、大きい金額を動かしているから、「ルール」が設定されている。例えば、株なら、「日経平均が10%下がったら、自分たちのポートフォリオ全体の15%を売って損失確定しなさい」、とか。その「ルール」は、半期決算ごと、つまり、4~9月と10~3月で区切られているんだ。

しんた:狙い目は「機関投資家の決算」。

しんた父:そう。リーマンショックのとき、リーマンの倒産が9月の中旬だったから、「たくさん持ってる投資家」の大部分は、4~9月の「半期」が終わった10月に入ってから本格的に売り始めた。日経平均が10%下がったから全体の15%売り、日経平均が20%下がったから、全体の25%売り…。

しんた:そっか。「ルール」が二重にも三重にもなっているのね。

しんた父:一方で、海外の投資家はほとんどが12月決算なんだ。10月から12月中旬にかけて、売れるだけ売る、という現象が起きる。日本の投資家は3月決算だから、3月中旬くらいまでに、売れるだけ売る。

しんた:ん? 確か、2009年2月が一番安かったって言ったよね。

しんた父:そう。月末ベースなら2月末。日次ベースでは、3月10日。そこまでは、売れるだけ売る。その後、売る(というか、ルールで売らなきゃいけない)人たちがいなくなる。

しんた:だから2月末とか3月10日が安値?そんなに単純なの?

しんた父:まぁ、偶然かもしれないけどね。ただ…。

しんた:ただ??

しんた父:2015年の8月から9月にかけて起こったチャイナショックと呼ばれる下げ局面では、日経平均は9月29日に底値をつけて、その後年末まで徐々に上がっていくんだ。決算と無関係とは言えなくもない。こうして、「売りたくないかもしれないけど、売らないといけない大きな投資家」がたくさん売ったあとに、個人投資家のチャンスができるわけだ。

出所は、Bloombergより楽天証券作成
出所は、Bloombergより楽天証券作成

大きく下げたときのポイントは決算月

ひな:しんた君! これは発明よ! 決算月が買い時ね!

しんた:まあ、同じことがまた起こるか分かんないけどね。あとは、リーマン後に景気が本格的に回復するまでに3年半以上、日経平均が10,000円前後だったわけだから、そこにも二つ目のチャンスがあったみたい。

ひな:つまり、大きく下げたときは、そのときの決算月が終わる直前、あとは、景気の回復途中にチャンスがあるかもしれない、ってことね。

しんた:そういうこと。そして、大きな投資家たちは、いったん売ったものを買い戻すまでに、時間をかけて買い戻すみたい。すぐに買い戻して、また下がっちゃったら、「へたくそ!」って言われちゃうから、景気が徐々に回復するのに合わせて、慎重に買い戻す可能性が高いんだって。

ひな:なるほどね。だから、相場がすぐに回復しないんだ。

しんた:ということで、長くなっちゃったけど、その3「暴落のあとは、思い切って投資をする!」の解説でした。

ひな:なんか、疲れたけど、今までで一番面白かった!