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 がんの『ウイルス療法』の治療薬が6月、国内で初めて厚生労働省から条件付きで承認されました。第一三共と東京大学が共同で開発した新薬は、脳腫瘍の一種を対象とし、臨床試験(治験)では1年後の生存率が8~9割と、従来の治療法の約6倍になるとされています。がん細胞だけで増えて死滅させる『ウイルス療法』の新薬は、他のがんにも効果があると期待され、新技術として注目されています。

【ポイント1】厚労省が『ウイルス療法』の新薬を承認

 第一三共は6月11日、東京大学と共同で開発した、がん治療用ウイルス薬「テセルパツレブ」について、厚生労働省から条件付きで製造販売承認を取得したと発表しました。「テセルパツレブ」は、遺伝子を改変したウイルスを使ってがん細胞を攻撃する新薬です。脳腫瘍の一種である「悪性神経膠腫」の治療を目的としており、国内で初めて承認された、『ウイルス療法』のがん治療薬となります。

 第一三共は、臨床試験で安全性と治療効果を確認し、昨年12月、厚生労働省に「テセルパツレブ」の製造販売を申請していました。治験では1年後の生存率が8~9割と、従来の治療法の約6倍になったとされます。「テセルパツレブ」は画期的な新薬候補などを優遇する「先駆け審査指定制度」の対象となっていました。

【ポイント2】ウイルスを利用した画期的な治療法

『ウイルス療法』は、がん細胞だけで増えるように改変したウイルスをがん細胞に感染させ、ウイルスそのものががん細胞を死滅させながらがん細胞内で増幅していくという、これまでにはない発想に基づいた新しい治療法です。正常な細胞ではウイルスが増殖しないため、安全性も高いとされます。

 ウイルスが直接がん細胞を死滅させることに加え、抗がん免疫が惹起されてワクチン効果も引き起こします。また、手術や放射線、化学療法など従来の治療法とも併用が可能とされます。

【今後の展開】『ウイルス療法』は一段の発展へ

『ウイルス療法』は基本的に全ての固形がんに同じメカニズムで作用することから、さまざまながんへの応用が期待されています。このため『ウイルス療法』の開発には、大塚製薬、タカラバイオ、中外製薬など多くの製薬企業が参入しており、一段の発展が予想されます。

 厚生労働省は8月4日、「テセルパツレブ」を公的医療保険の対象とすることを決めました。新技術として注目される『ウイルス療法』の普及には医療財政との兼ね合いが大きく影響するとみられます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。