任天堂
1.2022年3月期1Qは、9.9%減収、17.3%営業減益
本稿は取材する前の決算メモです。本稿における任天堂の楽天証券業績予想はすべて暫定値です。取材後意見が変わった場合は再度レポートします。
任天堂の2022年3月期1Qは、売上高3226億円(前年比9.9%減)、営業利益1,198億円(同17.3%減)となりました。1年前の2021年3月期1Q(2020年4-6月期)は新型コロナ禍の中での巣ごもり消費が活発な時期であり、ニンテンドースイッチ・ハードウェアが各国で品切れとなり、「あつまれ どうぶつの森」「マリオカート8デラックス」などの任天堂製優良ソフトが極めて好調に売れた時期です。また、店頭でパッケージソフトを買うのではなく、ダウンロード販売で買う人も多く、任天堂にとっては良好な収益環境でした。この時期との比較になると、今1Qの減収減益は仕方がないとも言えます。
表8 任天堂の業績
表9 任天堂:ニンテンドースイッチ・ハード、ソフトの販売台数、本数(四半期ベース)
表10 主要な任天堂製ニンテンドースイッチ用ソフトの販売本数
2.旧作優良ソフトの販売は息切れか
一方、ニンテンドースイッチ時代の任天堂の高水準の業績を牽引してきた旧作優良ソフト(前期以前に発売されたソフト)、「マリオカート8デラックス」「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」「リングフィットアドベンチャー」「あつまれどうぶつの森」などの四半期ごとの売れ行きを見ると、これ以上は伸びなくなっている状況、あるいは息切れ感も見えるようになりました。
現在もニンテンドースイッチは人気のあるゲーム機で、ハードが地域によっては品薄になっている模様です。ただし、ニンテンドースイッチは2017年3月に発売されて以来、4年を経過しており、ブームのピークに差し掛かりつつあるか、あるいは既にピークを過ぎた可能性があります。その場合は、いかに優良ソフトとはいえ旧作ばかりに頼るわけにもいかず、今後は新作ソフトの発売が増えると思われます。一方で、既に開発費を償却し終わり、多額の広告宣伝費をかける必要のない旧作優良ソフトの販売に比べ、新作大作ソフトは販売効率は落ちると思われます。
このような見方から、楽天証券では2022年3月期を売上高1兆7,100億円(前年比2.8%減)、営業利益5,700億円(同11.0%減)、2023年3月期を売上高1兆5,000億円(同12.3%減)、営業利益4,800億円(同15.8%減)と予想しました。前回予想の2022年3月期売上高1兆8,800億円(同6.9%増)、営業利益6,800億円(同6.1%増)、2023年3月期売上高1兆7,800億円、営業利益6200億円から下方修正しました。
なお、今年10月発売の有機EL版スイッチには一定の販売効果があると思われますが、ニンテンドースイッチの市場全体を押し上げるほどではないと考えています。
表11 任天堂の業績予想の前提(2021年8月)
3.今後6~12カ月間の目標株価は、前回の6万6,000円を4万5,000円に引き下げる。
今後6~12カ月間の任天堂の目標株価を、前回の6万6,000円から4万5,000円に引き下げます。楽天証券の2023年3月期予想EPS2820.6円に、業績が下降局面入りしたと思われることを考慮して想定PER15~20倍を当てはめました。
次の焦点は次世代機発売がいつになるかです。当然のことながら、任天堂は次世代機開発を行っていますがその内容は不明です。これまでの任天堂の考え方から、ニンテンドースイッチ・ハードを購入する人達が十分少なくなるまで、任天堂は次世代機を発売しないかもしれません。この場合、当面は業績下降局面が続かざるをえないと思われます。そのため、当面は投資妙味がない状態が続くと思われます。
なお、上限180万株、1,000億円の自社株買いを発表しました。期間は2021年8月6日~9月15日です。
グラフ4 任天堂のゲームサイクル:据置型ハードウェア
グラフ5 任天堂のゲームサイクル:携帯型ハードウェア
グラフ6 任天堂のゲームサイクル:据置型ソフトウェア
本レポートに掲載した銘柄:アドバンスド・マイクロ・デバイシズ(AMD、NASDAQ)、ソニーグループ(6758)、任天堂(7974)