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 各国政府が低炭素社会に向けて大きくかじを切る中、各国・地域の環境規制強化は加速する一方です。こうした政策当局の対応を背景に、国内外の自動車各社は取り組みの手法には違いがありますが、『EV』などへのシフトを加速しています。ただ今後も一段の前倒しを迫られそうです。自動運転がやや時間を要するとみられる中、電動車への対応が、関連各社の今後の競争力を左右するとみられます。

【ポイント1】各国の政策当局で環境規制強化の前倒しが相次ぐ

 各国政府が低炭素社会に向けて大きくかじを切る中、各国・地域の環境規制強化は加速する一方です。欧州委員会は7月14日にハイブリッド車を含むガソリン車やディーゼル車などの新車販売を2035年に事実上禁止する案を打ち出すなど日を追うごとに規制が厳しくなっています。

 こうした政策当局の対応を背景に、国内外の自動車各社は取り組みの手法には違いがありますが、『EV』などへのシフトを加速しています。ただ今後も一段の前倒しを迫られそうです。

【ポイント2】国内の自動車大手は電動車シフトを前倒し

 トヨタ自動車は5月、2030年を目標とした電動化計画の見直しを公表しました。HV(ハイブリッド車)を含む電動車の販売は800万台と従来計画の550万台から引き上げます。『EV』・FCV(燃料電池車)については200万台と同100万台から倍に増やす計画です。同時に欧米大手とは一線を画し、強い系列企業との総合力を生かして、HVの拡大も進めます。

 ホンダは4月、国内の自動車大手で初めて世界での新車販売の全てを『EV』とFCVに切り替え2040年までにHVも含め走行中にCO2を排出する新車の販売をやめると公表しました。『EV』・FCVの比率を2030年に先進国全体で40%、2040年には世界で100%とするものですが、ルールが変わるなら計画の前倒しを検討する方針です。

【今後の展開】電動車対応が競争力を左右

 自動運転が遅れがちとなる中、『EV』対応が、競争力を左右する重要なポイントになってきました。企業は独フォルクスワーゲン(VW)など、2030年に欧州新車販売の6割にするなど『EV』に集中する企業や、トヨタのようにPHV(プラグインハイブリッド車)の併存拡大を目指すなど戦略は分かれています。また『EV』は電池の性能やコストの改善、航続距離の延長など解決すべき課題は多く残る上、莫大(ばくだい)な投資も必要になります。規制強化の動きや技術開発の状況などをみながら各社は計画を修正していくとみられ対応が注目されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。