「ネット2強によるプラットフォーム相互開放」報道、SaaSベンダーに影響か

 米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は14日、中国の有力プラットフォーマー2社、アリババ集団(09988)とテンセント(00700)が相互にエコシステムの開放を検討しているという驚きのニュースを伝えた。BOCIはこれが、微盟集団(02013)や中国有賛(08083)など、EC(電子商取引)向けSaaSベンダーのビジネスモデルに対する疑念を引き起こし、両社に対する投資心理を悪化させる可能性を指摘している。ただ、長期的には、テンセントの有力ソーシャルアプリ「微信」(WeChat)がオープンプラットフォームで、かつプライベートなトラフィックに最適な場所であり続ける限り、EC SaaSベンダーへの恩恵が続くとみる。SaaSはクラウドサーバー上のソフトウエアをネット経由でユーザーに提供するサービスを指す。

「アリババとテンセントが“壁に囲まれた庭園”(クローズドプラットフォームを意味する)の開放を検討」と題したWSJ紙の記事を受け、市場では「微信」上にEC SaaSを構築している微盟集団や中国有賛への影響に関する議論が巻き起こった。この記事によれば、アリババとテンセントは独占禁止法に基づく中国政府のネット企業の締め付けを受け、長年積み上げてきた互いの仮想障壁を取り除く方向で検討に入ったという。実現する可能性があるのは◇テンセントの決済サービス「微信支付(WeChat Pay)」をアリババのECプラットフォーム「天猫」あるいは「淘宝」で使えるようにする、◇アリババのECリストを「微信」内で簡単に共有できるようにする――などで、このうち2つ目の点が、EC SaaSベンダーのビジネスに直接影響する可能性があるという。

 BOCIはアリババとテンセントとの相互開放が実現した場合に考えられる変化として、「微信」上での店舗出店需要の縮小を挙げている。販売店側にとって、2つのプラットフォーム上での店舗の重複運営はコスト効率が悪いためで、この点ではEC SaaSベンダーに短期的な影響が及ぶ可能性があるとした。微盟集団や中国有賛の売り上げに占めるEC SaaS業務(主に微信向け)の比率はそれぞれ推定20%、35%に上る。

 逆に変わらないポイントとして、BOCIは「微信」のECエコシステムの優位性を指摘している。長期的には、店舗側は買い手基盤が最も大きく、取引コストが最も小さいマーケットプレースを選択するためで、両社が相互開放しても「微信」のECエコシステムと、関連SaaSベンダーに対する強気の見方は変わらないという。

 ただ、大手ネットプラットフォーマーに対する中国政府の締め付けに関しては短期的に不透明感が強く、BOCIはこの点から、EC SaaS銘柄に対する市場のセンチメントは後退するとみる。一方、ビジネスの視点からは、この報道内容が事実であっても「検討」段階に過ぎず、その影響を評価するのは時期尚早との見方。微盟集団や中国有賛のビジネスに直ちに影響するとは考えていないとしている。