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 製品ライフサイクルを通じた環境負荷を評価するライフサイクルアセスメント(LCA規制)の検討が欧州を中心に進んでいます。火力発電比率が約75%とEU(欧州連合)などと比べて高水準にある日本は、国内での素材や部品、完成品の製造の各段階でCO2排出量が多い電力を使うことになるため、LCA規制は不利になります。企業は製造や物流を含むサプライチェーン全体で『脱炭素』への対応を迫られることになり、『脱炭素』を加速させています。

【ポイント1】石炭火力の割合の高い国内企業はLCA規制は不利

 LCA規制の検討が欧州を中心に進んでいます。LCA規制とは製品やサービスが生まれてから廃棄されるまでのライフサイクルを通じた環境負荷を評価する取り組みです。自動車のような工業製品であれば原料となる鉄などの資源採掘から製造、使用、メンテナンス、リサイクル、廃棄までを指します。

 自動車を例としてみると、国産車は走行中の燃費では世界最高水準にあります。一方、全電源に占める火力発電の割合は、EUが約37%なのに対し、日本は約75%の高水準にあります。国内での素材や部品、完成車の製造は各段階でCO2排出量が多い電力を使うことになるため、LCA規制では不利になります。こういった状況下、企業はサプライチェーン全体で『脱炭素』に挑む一歩踏み込んだ対応に取り組んでいます。

【ポイント2】日本企業は『脱炭素』を加速

 トヨタ自動車は昨年6月、中部電力、豊田通商と、国内の再エネ電源の取得・運営を手掛ける共同出資会社、トヨタグリーンエナジーを設立しました。今年6月11日にはトヨタ自動車は当初計画を前倒しして、2035年までに世界の自社工場でCO2排出量を実質ゼロにする目標を打ち出しました。また直接取引する主要部品メーカーに対して2021年のCO2排出量を前年比3%減らすよう求めたといわれています。

 物流、素材企業なども『脱炭素』を加速しています。日本郵船は、重油の代わりに液化天然ガスを主燃料とする自動車運搬船12隻の発注を発表、船体の構造も見直してCO2の排出量を約40%減らせる見込みです。また、日本製鉄は水素還元製鉄に取り組むと発表しました。

【今後の展開】『脱炭素』に向けた総合的な対応が企業の成長を左右

 LCA規制の検討が欧州中心に進み、企業は製造や物流を含むサプライチェーン全体で『脱炭素』に挑む必要に迫られています。これにより政府の電力政策や生産から廃棄までのサプライチェーン全体での総合的な対応が重要性を増しています。個々の企業の取り組みに加えて、これらが企業の今後の成長を大きく左右する要因となるとみられ注目されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。