3)エヌビディア
最後にエヌビディアの動きです。GPUがAI制御に向いていることから、データセンター用GPUが継続的に伸びています。パソコン用GPUは一部の機種が暗号資産のマイニングに向いていることからこの1年間大きな需要があり、今も需要が続いています。ゲーム用GPUの需要も強い状態が続いています。アップル、AMDとは競争関係にありますが、パソコン用CPU最大手のインテルとは共存関係にあります。インテルのGPUはCPUに内蔵されており、機能も低く、外付けのGPUは1機種のみです。そこで、インテル製CPUの隣にはエヌビディアのGPU「GeForce」が搭載されることが多くなっています。
エヌビディアは昨年大きな決断をしました。2020年9月、エヌビディアはソフトバンクグループ傘下の半導体会社「Arm(アーム)」を400億ドル(約4.4兆円)で買収すると発表しました。約18カ月間(2022年3月まで)で取引を完了する予定です。アームはパソコン、スマートフォン、自動車、各種民生機器、産業機器向けのロジック半導体のアーキテクチャーとして使われています。例えば、アップルのM1はアームアーキテクチャーをベースに設計されています。
エヌビディアが目指すものは、まずCPU市場への参入です。アームを使ったスーパーコンピュータ向けCPUへの参入をすでに表明していますが、より市場が大きいパソコン向け、サーバー向けCPUへも遠からず参入すると思われます。独立したGPUを搭載していないパソコンも多くCPUは市場が大きいのです。CPU市場への参入は盟友関係にあるインテルと競合することになりますが、大きな果実も手にすることができると思われます。
4)最も重要なことは高性能パソコンはよく売れること
各社が大きな投資をしながらパソコン用チップの開発と生産、販売に注力するのは、高性能チップを搭載した高性能パソコンは、コストパフォーマンスが良ければ、よく売れるということです。このことは、AMDとアップルが実証しました。高性能でコストパフォーマンスの高いパソコンが売れる限り、パソコン用チップを巡る各社の競争は続くと思われます。
4.注目銘柄
1)エヌビディア
ゲーミング向け、データセンター向け中心に業績好調が続いています。ゲーミングの主要顧客に任天堂があり、ニンテンドースイッチのSoCを供給しています。今年10月発売の「ニンテンドースイッチ(有機ELモデル)」は、エヌビディアにとって任天堂向けが当面は減らない程度の効果があると思われます。
エヌビディアの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の870ドルから今回は1,000ドルに引き上げます。業績予想は変更しませんが、株式市場でエヌビディアの将来に対する評価が上昇していると思われることを考慮して、想定バリュエーション(株価評価=想定PER)を引き上げます。2023年1月期の楽天証券予想EPS 17.41ドルに、2023年1月期営業増益率38.9%に対して前回と同じく想定PEG1.0~1.5倍として、想定PERを上限の55~60倍としました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
なお、1対4の株式分割を行います。日本時間2021年7月20日(火)午前5時時点の保有株数が株式分割の対象となります。権利落日は米国時間2021年7月20日(火)で、米国時間の7月20日から株式分割調整ベースで取引が開始される予定です(上記の目標株価は分割前の株価です)。
表4 エヌビディアの業績
2)AMD
業績は好調で、インテルが生産能力増強に手間取っている間隙を突いてシェアを伸ばしています。ただし、2022年に予想されるインテルの7ナノライン稼働開始、(報道ベースの話ですが)インテルがTSMCから3ナノ半導体を調達するという観測、アップルの3ナノSoC搭載パソコンの発売などに、どう対応するのかが今後の焦点となります。
目標株価は前回の110ドルを維持します。引き続き中長期で投資妙味を感じます。
表5 アドバンスト・マイクロ・デバイシスの業績
3)インテル
今期は業績が停滞していますが、来期からは先端CPUの生産能力増強の寄与で、業績は緩やかに回復すると予想されます。
目標株価は前回の70ドルを維持します。四半期ベースで減収減益が続いているため、いつ増収増益に転じるのかが今後の焦点になると思われます。
表6 インテルの業績