バブルは古い産業構造を固定化した

 余談だが、過去を振り返ったついでに書いておく。筆者は、バブルの発生と崩壊は、不良債権問題や不況の他に、古い産業構造の固定化をもたらしたのではないかと考えている。

 80年代の前半には、日本の企業は欧米企業へのキャッチアップをあらかた終えて、大手の企業についてはすでに「大企業病」的な煮詰まり感がでていた。しかし、80年代の後半にバブルが起こったことで、需要が急拡大したので、企業はビジネス・モデルや経営を変化させる暇もなく、この需要拡大に対応し、利益を享受した。

 この間、バブルは企業の古いビジネス構造を余計に延命させたのではないか。

 これが、「少し好景気」「少し不景気」といった状況なら、ビジネスのやり方を工夫したり、新しい分野に設備投資をしたりする余裕があるだろうが、史上最高益を更新し続けるようなバブル的な需要の拡大には、既存のビジネス構造をそのままに、需要に対応することで十分忙しいし、結果的にも満足してしまいがちだ。

 次に、バブルの崩壊過程に入ると、今度は資産価格の低下や需要の低下、それに資金繰り環境の悪化に見舞われる。こうした場合、どうしても財務的に弱い新興企業の方が資産の蓄えなどが大きな古くて大きな企業よりも倒産しやすい。バブルの崩壊があまりに厳しいものになると、古い企業・古い産業構造が残りやすいのではないか。

 上記のような意味では、80年代末期のバブルの発生とその後の崩壊は、日本のビジネス界の進歩を20年近く止める働きを持ったのではないかと思う。

 かつての、相対的な技術力や個々の会社の社員の能力などを考えると、たとえば情報テクノロジーの分野などは、日本でもっと新しい企業やビジネスの有力なものが生まれても良かったのではないだろうか。