EC向けSaaS分野が有望、微盟集団と中国有賛に恩恵
デジタル化やクラウドへの移行、SaaS(Software as a Service:クラウドサーバー上のソフトウエアをネット経由でユーザーに提供するサービス)の台頭などを背景に、中国のソフトウエア業界は形を変えつつある。うちクラウドとSaaSは、顧客密着度の高さや継続的な収益という点で優れたビジネスモデルの実現につながるツール。BOCIはソフトウエア・セクターを掘り下げる中で、まずは微盟集団(02013)と中国有賛(08083)が急成長を遂げるネット通販(EC)分野に着目した。両社の急成長を支えるのはテンセント(00700)による自前のECエコシステムの構築への努力や、「私域流量」(プライベートトラフィック)という新たなマーケティング手法の台頭など。BOCIはうち微盟集団の成長見通しを楽観。強気の投資判断で、カバレッジを開始している。
微盟集団や中国有賛のようなサードパーティーSaaSベンダーは、ECのストアフロント(ネット店舗)ツール、ソーシャルリレーションシップ・ベースのターゲットマーケティング、オフラインとオンラインの融合などといった点で、テンセントのECエコシステムにおける主要インフラを担うだけにエコシステムの拡大が追い風となる。
BOCIは中国のソーシャルEC(ユーザー同士の商品情報共有やライブコマースなど、SNS融合型のEC)市場全体が24年まで年率平均36%の成長を遂げると予想。24年時点で6兆2,000億元規模を見込む。小売り・EC分野のSaaSのTAM(獲得可能な最大市場規模)は20年に123億元。その半面、ソーシャルEC市場のGMV(流通総額)は約2兆元に上り、SaaSの取り分は現状、わずか0.6%にとどまることを示唆する。ソーシャルEC分野のSaaSビジネスは、収益化という点で潜在力が大きいという。
EC向けSaaSの場合、時間が経つにつれて競合他社との境界が曖昧になってきている。店舗側からの新たな要求やSNSプラットフォームの収益化戦略の変更、新規参入といった一種破壊的な要因の積み重ねにより、市場がダイナミックに変化していることが理由。ただ、BOCIはこうした状況下で、テンセントのエコシステムにおける先発組の微盟集団と中国有賛は、今後も優位性を維持する可能性が高いとみる。
微盟集団は「微信」ミニプログラムの主要EC SaaSソリューションプロバイダー。BOCIは製品の多様性や成長見通しの明確さ、財務の健全性などを前向きに評価し、株価の先行きに強気見通しを付与。もう1社の中国有賛は、テンセントのECエコシステムにおける主要SaaSベンダー。BOCIはGEM(創業板)からメインボードへの指定替えに期待しつつ、GMVの成長見通しの弱さを理由に株価の先行きに中立見通しを付与した。
一方、両社の潜在リスク要因としては、◇テンセントのプラットフォームに対する依存度の高さ、◇EC向けSaaS技術の急激な進化、◇新規参入を受けた競争激化、◇採算前段階にある両社の財務リスクを挙げている。