「陰極まれば陽転す」
陰極まれば陽転す:もう売り物が出てこないほど売りつくされて、逆に買いのエネルギーがたまっている状態であるため、良い材料が出ると一気に上昇に向かう、という意味の格言
前回も触れましたが、今年に入ってからの通貨の優劣は、ワクチン接種ペース(接種率)と出口戦略の時期が決める動きとなっています。ワクチン接種ペースが速く、接種率が高まっている国は、行動規制が緩和され、経済活動が活発になり、景気が回復していきます。そして、雇用が回復し、賃金が上昇し、物価が上昇し、これまでの金融緩和政策の出口への議論が高まってきます。
18日に発表された日本の1-3月期GDP(国内総生産)速報値は実質年率で▲5.1%と、米国の+6.4%とかなり見劣りする結果になりました。また、日本の接種率は世界で100位以下であり、米国は世界で1、2位です。
このように「円」を取り巻く環境は最悪です。しかし、もし、現在の状況がこれ以上悪くならない状況(「陰の極:いんのきょく」)であるならば、これからは悪い情報には反応が鈍くなり、良い情報に敏感に反応していくかもしれません。「陰極まれば陽転す」と相場格言にあるように、日本で接種ペースが早まると、「円」を取り巻く環境は好転するかもしれません。
一方、米国の接種ペースの伸びは鈍化が鮮明になってきています。CDC(米疾病対策センター)によると、1日あたりの接種回数(7日移動平均)は5月17日時点で183万回となり、4月中旬のピーク時の338万回から半分近くになっています。その結果ワクチンも大量に余ってきているようです。また、バイデン大統領は「7月4日の独立記念日までに成人の7割に少なくとも1回接種」との目標を発表しましたが、現時点では6割に留まっているようです。各州はワクチン接種を促すためにNBA招待券や抽選で100万ドル贈呈などの特典を次々に打ち出しています。
「6割の壁」で米国が留まっている間に、日本の接種ペースが速まれば、ウサギとカメのレースのように日米の接種率は縮まっていく可能性があります。日本の国民性から真面目に接種していくことが予想されます。
景気の面でも、ワクチン接種が進み、感染拡大ペースが鈍化し、緊急事態宣言が解除されていけば、日本の景気はこれから上向いていくことが期待されます。7月29日には、米国4-6月期GDP速報値、8月16日には日本の4-6月期GDP速報値が発表されます。日本はマイナスの可能性がありますが、日米の景気の差が縮まるのか拡大するのかという点に注目したいと思います。それまでにも1-3月期のGDPの改定値が発表されますので日米の差がどうなるのか注目です。
(5/27 米国改定値 6/24 米国確定値、 6/8 日本2次速報値)