2.SPE(半導体製造装置事業)の業績が急回復し全社業績をけん引
1)SPEが業績好調
セグメント別に見ると、前4Qは、SPEが売上高735億円(前年比2.1%増)、営業利益107億円(同2.0倍)と好調でした。前期に入ってそれまで問題があった半導体製造装置(トップシェアのウェハ洗浄装置が中心)の生産性が大きく改善した結果、前年比でも前3Q比でも大幅増益となりました。ファウンドリ(TSMCのような半導体受託生産業者)、NAND型フラッシュメモリ向けが増収になりました。
また、前4QのSPE受注高は839億円(前年比34.5%増)となり、前3Q803億円に続き高水準の受注高になりました。2021年3月末SPE受注残高は1,150億円(2020年12月末比9.9%増)となり、水準を切り上げています。
この結果、SPEの2021年3月期通期は売上高2,355億円(同2.2%増)、営業利益259億円(同60.9%増)となりました。
会社側では、2022年3月期のSPE業績を売上高2,850億円(同21.0%増)、営業利益400億円(同54.4%増)と予想しています。ファウンドリでは5ナノ、3ナノへの投資に加え汎用半導体への設備投資が増えています。ロジックではインテルの大型投資とファウンドリへの参入が計画されており、メモリではDRAM、NANDともに増産投資が増えると予想されます。そのため、ファウンドリ、ロジック、メモリの主要3分野向けが今期は増収になると予想されます。生産性改善も続く見通しで、大幅増益が予想されます。楽天証券でも会社予想と同じ業績を予想しています。
会社側では、2023年3月期も半導体設備投資の活況が続くと予想しています。そのため、引き続きファウンドリ、ロジック、メモリの各分野向けが増加すると予想されます。楽天証券では、東京エレクトロンやセメス(サムスン系のウェハ洗浄装置メーカー)との競争もあるため、2023年3月期を売上高3,300億円(同15.8%増)、営業利益510億円(同27.5%)と増収率を保守的に予想していますが、引き続き業績好調が予想されます。
表2 SCREENホールディングス:セグメント別損益動向(四半期ベース)
表3 SCREENホールディングス:セグメント別損益動向(通期ベース)
グラフ1 SCREENホールディングスの半導体製造装置事業受注高
2)SPE以外の事業も黒字だが、今後はリスクもある
SPE以外のGA(グラフィックアーツ機器事業(デジタル印刷機等))、FT(ディスプレー製造装置および成膜装置事業)、PE(プリント基板関連機器事業)の前4Qは、いずれも増益となりました。2021年3月期通期では、GAは営業減益でしたが、FT、PEは黒字転換しました。一定の生産性改善策が奏功しました。
ただし、GA、FTは将来に向けてリスクが残ると思われます。GAは紙需要の減少による印刷機需要の減少リスクがあり、FTはパネル価格の上昇を見て会社側は業績堅調を予想していますが、実際にそうなるかどうか、不透明要因があります。一方、PEは5G向けプリント配線基板用描画装置、検査装置に一定の需要が予想されます。
これらのことを考えると、SPE以外の事業は黒字になっているものの、再度の業績悪化リスクがないとは言えないため、引き続き注意が必要と思われます。
3.2022年3月期、2023年3月期楽天証券業績予想を上方修正する
全社業績の2022年3月期会社予想は、売上高3,725億円(前年比16.3%増)、営業利益375億円(同53.1%増)です。楽天証券もほぼ同水準の業績を予想します。
2023年3月期は楽天証券では、売上高4,180億円(同12.1%増)、営業利益480億円(同28.0%増)と予想します。2022年3月期、2023年3月期とも、前回の楽天証券予想から上方修正します。
GA、FTの業績にリスクは残るものの、SPEの成長によって2022年3月期、2023年3月期とも、好業績が予想されます。
4.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の1万1,000円から1万3,000円に引き上げる
SCREENホールディングスの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の1万1,000円から1万3,000円に引き上げます。2023年3月期の楽天証券予想EPS 672.2円にSPEの成長性とGAその他の事業のリスクを考慮した想定PER約20倍を当てはめました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。