今年はオールドインダストリーの業績モメンタムが強くなる展開

 バリュー株優位の展開は終わり、ここからはグロース株が復活すると考える人もいます。私は、そうは思いません。バリュー株優位の展開が、今年の秋くらいまで続くと予想しています。それには、2つの理由があります。

【1】バリュー・グロースのバリュエーション格差がいまだに大きい
 2021年に入ってからバリュー優位が続いているとは言え、それはごく短期的なことです。もっと長い目で見るとグロース株ばかりが上がり、バリュー株が低迷する時期が10年近く続いてきました。その結果、グロース株は全般的にバリュエーションが高くなりすぎている一方、バリュー株はバリュエーションが低すぎるものが多くなっていると考えています。割安なバリュー株を見直す流れがまだ続くと予想しています。
 以下のイメージ図で、現在の日本株は「割安株相場」の中にいると考えています。

成長株相場から割安株相場への転換(イメージ図)

出所:筆者作成

【2】今年は、オールド産業復活の年に
 今年は、私が「3大割安株」と呼んでいる「金融株・資源関連株・製造業」の業績モメンタムが強い年になると予想しています。中国・米国の景気が急激に回復するからです。一時的に、モノや資源が不足し、一時的にインフレが復活し、米長期金利が上昇すると考えています。つまり、一時的に、金融株・資源関連株・製造業が活躍する20世紀の経済環境に戻ると考えているわけです。

 過去に、日本株でバリュー株優位が長く続いた時は、いずれもオールド産業が活躍した時でした。代表的なものに以下があります。

  1. 1980年代後半のバリュー相場:円高と貿易戦争でハイテク株がさえない中、内需中心のバブル景気が盛り上がり、オールドインダストリーが活躍した
  2. 2000年代前半のバリュー相場:金融株やオールドインダストリーが、構造改革で復活。さらに、BRICs (ブリックス:中国・インド・ブラジル・ロシア)と言われる新興国の成長加速で、世界的に重厚長大産業が復活。

 以上の理由から、今年秋までの日本株市場では、景気敏感バリュー株のパフォーマンスが強くなると考えています。これから始まる「業績相場」に備えて、今年増益率が高く、PER(株価収益率)が低く、配当利回りが高い「景気敏感バリュー株」を買っていくべきと考えています。
 以下に投資の参考銘柄を挙げます。今の相場の流れの中で、景気敏感バリュー株として買われる可能性のある銘柄を、三大割安株から選びました。

<投資の参考銘柄:三大割安株>

コード 銘柄名 種別 株価:円 配当
利回り
PER
:倍
PBR
:倍
1株
当たり
配当金
:円
8306 三菱UFJ FG 金融株 597.5 4.3% 10.6 0.46 25.9
8766 東京海上HD 金融株 5,351.0 4.4% 11.5 1.04 232.8
8058 三菱商事 資源関連 2,993.5 4.5% 11.6 0.78 134.0
8053 住友商事 資源関連 1,556.0 4.5% 8.5 0.76 70.0
9101 日本郵船 資源関連 4,470.0 4.5% 5.4 1.20 200.0
7203 トヨタ自動車 製造業 8,341.0 2.9% 9.8 1.16 243.2
4188 三菱ケミカルHD 製造業 858.4 3.0% 11.6 1.07 26.2
4005 住友化学 製造業 591.0 2.6% 11.7 1.04 15.5
出所:配当利回り・PERは今期(2022年3月期)予想ベース、配当利回りは1株当たり配当金(今期予想)を5月11日株価で割って算出。PERは5月11日株価を1株当たり利益(今期予想)で割って算出。5月11日時点で2021年3月期決算を発表済みの三菱商事・住友商事・日本郵船について、1株当たり配当金・1株当たり利益は今期会社予想。その他銘柄はQUICKコンセンサス予想

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