少額投資なら「分散投資は不要」

 社会人1年生の方で、初めてもらったボーナスから1万円で投資を始めるならば、何から始めたら良いでしょうか?これ1つでOKというような、世界中の株や債券に投資するファンドもあります。そういうファンドに、コツコツと毎月積み立てで投資していくのも悪くないと思います。

 ただし、少額投資なら、私は「分散投資は不要」と思います。社会人1年生の方が仮に65歳まで働くとして、生涯で稼ぐ収入は1億円を超える可能性があります。うまくやりくりすれば定年までに2,000万円の貯蓄を作ることも可能かもしれません(個人個人で事情が異なるので、ここに出した金額はあくまでも「仮」の数字です)。

 そうと仮定すると、最初に投資する1万円は、65歳までに作る2,000万円の0.05%でしかありません。したがって、どのようなものにも自由に投資して良いと言えます。

 社会人1年生は、貯蓄がほとんど無くても、大きな人的資本(将来にわたって収入を稼ぎ続ける力)を所有しています。したがって、総資産(人的資本と貯蓄の合計)に占める貯蓄の比率はきわめて小さいと言えます。だから、最初の投資では高いリスクを取って積極的な投資をすることが可能です。

 もし最初に投資した投資信託が値下がりしても、将来稼ぐ収入から追加で投資する際に安く買えるので悪くないと言えます。最初に投資した投資信託が、大きく値上がりしたら、それはそれで良いのですが、追加で投資する時に高く買わなければなりません。その時は、投資対象を変えて、別のものに投資していくと考えれば良いと思います。

 社会人になって何十年か経過し、金融資産(貯蓄)が増えてくると、逆に人的資本(退職するまで収入を稼ぐ力)は少しずつ減っていきます。すると、投資リスクも適切に管理する必要が出てきます。高リスクの投資対象(株)と安定的な投資対象(債券)などに分散投資し、集中投資のリスクを避けることが望まれます。

 仮に2,000万円の貯蓄を所有していても、他に資産が無く、完全に退職しているなら、投資で高いリスクを取ることは難しくなります。逆に、1万円しか貯蓄が無くても、これから生涯にわたって収入を稼ぎ続けていく新社会人の方は、自由にリスクを取って投資することができます。

 最初に買う1万円では、思い切って自分が良いと思う何かに集中投資して良いと考えます。米国の成長株に投資しても良いし、アジア株に投資するファンドでも、日本の小型成長株に投資するファンドでも良いし、金プラチナに投資するのでも良いと思います。自分の気持ちで「これが良い」「これに投資したい」と思うものから、選んでください。