英国のEU残留・離脱を問う国民投票は離脱という結果になりました。これを受けて世界の金融市場には一時ショックが走り、一部メディアでは「リーマンショック」と比較する記事が散見される事態となりました。
私がここで何故、「リーマンショック」をカギ括弧入りで記したか。それは「リーマンショック」は和製英語だからです。アメリカで「リーマンショック」と言っても、何のことか察してはもらえるとは思いますが、まずこの表現は使いません。ということは「リーマンショック」という文字を見るときは、少なくとも日本で書かれたか作られた情報だということです。そして日本で「リーマンショック」を目にする時はどういう時か。それはこういう時が多いと思います→第317回何故メディアの情報を鵜呑みにしてはならないか
すなわち、メディア間の競争が厳しくなっている中、経済や金融市場に不透明要因が出てきたらあの、100年に一度と言われた「リーマンショック」と同等、又はそれ以上の可能性を示唆することによって読者や視聴者の興味を引いたり、クリック数を増やしたりするのが目的と疑ってみるべきだと思います(というこの記事のタイトルもそうなってしまいましたが・・・)。
それでは実際、英国のEU離脱と「リーマンショック」、そもそもどんな共通点があるのでしょうか?
「市場が予想していなかった」というのは一つかもしれませんが、その点では英国のEU離脱の方がそうだったでしょう。市場では概ね、人が合理的な選択をするとの前提に予想が形成されていくので、まさか、イギリス国民が少なくとも短期的には自分達にマイナスになる判断をするとは考えていなかったのでしょう。一方で「リーマンショック」につながる金融危機は2007年7月から始まっており、またリーマンブラザーズの1週間前に実質破たんした政府系金融機関や、直後に危機が訪れた保険会社AIGの影響の方が大きかったかもしれません。金融業界にいる人間にとっては英国のEU離脱ほど予想されていない事態ではなかったと思います。
またもう一つの共通点として、発表された最初の取引日にダウが500ドル以上下落したというのが挙げられます。私はリーマンブラザーズが破たんした当日のテレビ番組で思わず「今日は500ドルの下落で済んでいますが・・・」と言ってしまったのを覚えています。それに対して、英国のEU離脱が更なる米国株式の下落につながるとは、どうしても考えられないのです。市場で言われている可能性は大きく3つほど挙げられます。