それではどうすれば日本の景気を良く出来るのか。シナリオとしては2つ考えられます。一つは他力本願ですが、アメリカの実質金利が上昇すること。そうなれば日米実質金利差が拡大して円安圧力が働きます。ただアメリカは当面、期待インフレ率を睨みながらの金利操作となる(=名目金利と期待インフレ率が並行して動く)可能性が高いと思われます。となると、少なくとも短期的には、実質金利の上昇は望みにくいということになります。

もう一つのシナリオは日本の実質金利を低下させること。これには名目金利をさらに下げるか、期待インフレ率を上げるか、又はその両方が必要です。ただ2014年終わり以降の日銀は、インフレ予想を引き下げたり2%のインフレ目標達成予想時期を先送りしても特段手段を講じなくなり、遂には2%のインフレ達成期限の2年が過ぎたというのに危機感も感じられなくなりました。市場は嘘が大嫌いです。市場が「2%のインフレ目標は掲げているだけ。達成できなくてもまた先延ばしするだけだろう」と思うようになったら、インフレ期待など上昇するはずもありません。

現在の日米実質金利差では、我々のモデルはドル円は99円を示しており、上記2つのシナリオが難しいとなれば、いずれこの水準を見ることになるでしょう。そしてその円高を投機によるものと勘違いし、実質金利を下げるという根本的な対策を怠って為替介入に頼るようだと、99円では済まなくなるかもしれません。

(2016年5月11日記)