10の命題の「正解」

 さて、順番に、筆者が「◎常識!」だと考える命題、いわば、筆者から見た正解を述べてみよう。受験生が使う問題集のように、手短に解説を加えておく。投資家同士の勉強会で議論のネタに使ってみていただいてもうれしい。出題者(筆者)への疑問やご意見も大いに歓迎します。

1.お金の使いみちは、後で自由に変えられる。資金使途と運用法は無関係だ

 老後資金、子供の学費、など使途によってお金の運用方法を変えることは無意味である。学資保険のような使途をうたった運用商品は不要であるし、米国で生まれた「ゴールベースド・アプローチ」(顧客の人生のゴール・目的に合わせて資産管理の手伝いをするという触れ込みの方法論)は単なる「営業話法」に過ぎないので相手にする必要はない。

2.運用に目標額・目標利回りは必要ない。「無理のない範囲で、なるべくお金を増やせば」それでいい

 お金が増えすぎても困ることはないのであって、無理なく増やせるベストを達成すればそれでいい。目標額を達成するために、「運用利回り」を先に決めると、不適切なリスク(過大であることも、過小であることもある)を取る原因になりやすい弊害がある(ダメなFP向けのソフトウェアに、この種のロジックのものがときどきある)。

3.投資家のタイプは商品選択に関係ない。「非効率的な運用が好きな人」はいないはず。人によって異なるのは、運用金額とリスク資産への投資額のみ

 初心者もベテランも、若い人も高齢者も、基本的には「最も効率的な運用を、適正なリスク額で」行えば、それでいいはずだ。投資家のタイプによって、適した運用方法・運用商品が変わるというのは、金融商品の売り手側が顧客に手数料の高い商品を売り付けるために流布している俗説に過ぎない。この説明だけでわからない人は、「リスクの大きさは、リスク資産への投資額で調節すればいい」という点を頭に入れてもう一度考えてみて欲しい。たとえば、リスクをあまり取りたくない投資家がいるのは確かだが、そういう人は、リスク資産への投資額を小さくするといいのだ。非効率的なものや高いコストの物に投資対象商品を変える必要はない。

4.金融マンに「相談」することは、赤ずきんちゃんがオオカミに人生相談するくらい愚かなことだ!

 金融マンは、自分の会社(ないし自分個人)が収益を上げるために仕事をしている。彼が顧客に取って最適な運用方法・運用商品を勧める可能性は小さいと思わねばならない。金融機関が行う「相談」は無料であっても近づいてはならない。素人が、プロの勧める商品(十中八九、手数料の高い商品)にその場でダメ出しすることは難しい。運用の失敗の多くは、「あの人はいい人だ」と金融マンを、「人で判断して」信じてしまうことから起こっている。