あなたならどうする
バイデン新政権のもとで財務長官に就任したFRB前議長のイエレン氏は、「ドルの価値は市場によって決定されるべき」であり「自国の輸出を有利にするためにドル安を求めることはしない」との考えを示しています。もちろん、為替操作には断固反対する立場。インフレ政策と称して通貨安誘導をする中央銀行の立場は難しくなります。とはいえ、米国の金融、財政政策が「ドル高」につながるかというと、必ずしもそうではない。
イエレン財務長官は、米経済のために「大胆に行動する(Act Big)」が必要だと宣言しました。1.9兆ドルの大型景気刺激策を成立させたばかりのバイデン大統領は、休む間もなくインフラ整備と気候変動対策に2.25兆ドルを投資すると発表。イエレン財務長官は、コロナ禍から米経済を一刻も早く立ち直らせるには「大胆な行動(Act Big)」が必要不可欠として、バイデン大統領の大型景気刺激策を全面的にバックアップする考え。
バイデン景気刺激策が商品価格を上昇させ、インフレが発生する可能性が高まっていますが、パウエルFRB議長は、物価が一時的に2%を超えたとしても緩和政策を続けると言明しています。
バイデン政権の景気刺激策、イエレン財務長官のドル高政策、そしてパウエルFRB議長のゼロ金利のセットが示す方向は、米国の経常赤字(貿易赤字)と財政赤字という「双子の赤字」拡大。双子の赤字は、将来的に深刻な経済危機が発生する原因となり、投資家の深刻なドル離れにつながるリスクをはらみます。
法人税増税計画にともない、イエレン財務長官は、世界の法人税率引き下げ競争に終止符を打ち、世界的な「最低税率」を設定することで合意するよう働きかけています。米国企業が税率の低い国へ本社を移転することを阻止する手ための段ともいえます。自国の都合に合わせて世界の基準を変えようとする。こんなことができるのはアメリカだけでしょう。
米国の金融政策は、ドル高ではなくドル安。ドル安誘導の為替操作はしなくとも、市場によって決定されるドルの価値は長期的に安くなるでしょう。