これは直感的にも理解しやすいと思います。政策金利というのはFRBが決定して、その水準に誘導していきますが、金融引き締めが進んでいって、経済の実力に見合わないような水準にまで金利が上昇してしまったら、やがて景気が冷え込んで後退局面に入る、というのは自然な現象です。短期の金利がFRBの影響を大きく受けるのに対して長期の金利は市場の需給によって決まりますから、短期の金利が長期の金利よりも高くなるというのは、「その金利水準は経済の実力に見合いませんよ」というシグナルになるのです。

バーナンキFRB元議長は、量的緩和を巡っては様々な意見や批判をよく受けていますが、2006年にかけての金融引き締め局面についての批判は殆ど目にすることがありません。しかし私は、2006年初の時点で既にイールドカーブが右肩下がりになる兆候が出ていたにもかかわらず、何故その後3回もの利上げに踏み切ったのか、ずっと疑問に思っています。その後金融危機が経済に与えたダメージを考えれば、あの局面での利上げは少なくとも2回分は余計であったと考えています。

さてそれでは今回の場合、金融引き締めがどこまで進めばイールドカーブが右肩下がりになると考えられるでしょうか。利上げ後、5年物国債の利回りは1.7%前後で取引されています。この水準を元にシュミレーションしてみると、利上げペースが年4回の場合は最終的な政策金利の水準は2.0%、利上げペースが年2回の場合は2.5%程度という結果が出てきます。一方で長期金利である10年物国債利回りは2.2%前後で取引されていますから、政策金利の水準が2.5%になった時には長短金利差はマイナスとなり、イールドカーブが右肩下がりになっている可能性が高いでしょう。しかし年2回の利上げペースで政策金利が2.5%に到達するのは、今から4年先の話です。4年あれば株式相場はどれだけ上昇できるかを考えればやはり今は、利上げを気にし過ぎるリスクの方が大きいと言えます。