先週の米国株式市場は、インフレ懸念の高まりから急落する場面がありました。特に打撃を受けたのはグロース株です。グロース株は将来により大きな利益を稼ぐストーリー性が魅力ですが、インフレが進むと先行きの不透明さと金利の先高観から、投資妙味が薄まります。

 インフレ懸念は、先週の12日に公表された4月のCPI(消費者物価指数)によって大きく高まりました。同指数は前月比で0.8%上昇となり、2009年以来の伸びを記録。食品とエネルギーを除くコアCPIも前月比0.9%の上昇で、1982年以来の伸びとなりました。

 経済がコロナ禍を乗り越え正常に向かうなかで、今年前半の物価高はあらかじめ想定されていましたが、着地が市場予想を大きく上回ったことで投資家に動揺が広がりました。

 その後、米国株式市場は落ち着きを取り戻し、相場は上昇しました。ただ、指数別でみるとナスダック指数の勢いはS&P500などを下回っており、本格回復に至るかは不透明です。市場のメインストーリーは、「物価高は一時的なもので、今後上昇率は落ち着き、金融当局のコントロール可能な範囲に収まる」という流れにあると考えられますが、物価高が落ち着く時期に関しては見方が分かれています。

 また、仮に急速なインフレが落ち着いたとして、次に来る議論(金融当局による債券買付額の見直しや富裕層をターゲットにしたキャピタルゲイン増税)で再び、グロース株に対する警戒感が高まる可能性があります。

 こうしたなか、相対的に堅調に推移しているセクターに輸送関連株があります。下の図表は、ダウ・ジョーンズ輸送株指数とナスダック100指数の過去6カ月間の相対推移を示したものになりますが、米国国債10年利回りが一段と上昇した2月中旬頃からパフォーマンスが逆転しており、輸送株指数は足元でも堅調に推移していることがわかります。

<輸送株指数とナスダック100指数の相対株価推移>

※2020年11月13日を100とした場合

出所:ブルームバーグより楽天証券作成
期間:2020年11月13日~2021年5月13日

 輸送関連株は、経済がコロナ禍から本格的な回復に向かうなかで業績拡大が期待できる局面にあります。足元ではさまざまな輸送関連銘柄が物色されていますが、そのなかでも今期だけでなく来期以降も利益の拡大が予想されている銘柄が以下の表です。

 このなかで、特に注目しているのは鉄道関連です。足元の決算で市場予想を下回るネガティブサプライズを出してしまいましたが、今後、半導体などの不足が解消し、経済が本格的に活動を再開すれば、鉄道輸送に対する需要は高まる可能性が高いです。競合が少ないため収益性が高く、配当利回りが一定水準あることも評価できます。

<今期以降の業績拡大が期待できる輸送関連銘柄>

※5月13日終値基準

出所:ブルームバーグより楽天証券作成、予想はブルームバーグコンセンサス