今後の成長が期待される電気自動車市場。特に、新エネルギー車(NEV)※の推進施策を図る中国の拡大に注目が集まっています。中国のNEV保有台数は今年5月末時点で約580万台となり、世界全体の約50%を占めたと報道されています。

※新エネルギー車(NEV)には、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)等が該当する。

 中国自動車工業協会によると、2020年における新エネルギー車(NEV)の販売台数は137万台と、全体の5%程度(2,531万台)でした。同協会では、2025年までに、新車販売に占める電気自動車の割合が20%を超すとの見通しを示しています。今後、40%以上の成長率を想定しているようです。

 こうした中国の電気自動車市場で高いシェアを有するのが、比亜迪(BYD)(銘柄コード:01211)上海汽車集団 (SAIC・モーター) (銘柄コード:600104)テスラ(TSLA)等です。

 BYDはもともと電池事業を展開する企業でしたが、2000年代に入り自動車事業に参入し、欧州メーカーとも電気自動車の開発で提携を結び規模を拡大させました。SAICは、自社自動車のほか、GMや独フォルクスワーゲンとの合弁事業も展開する企業です。テスラは、2020年に中国現地で生産を始めるなど、供給能力を強化しました。

 一方、足元では現地新興企業の勢いが増しており、今後は勢力図が変化する可能性も浮上しています。新興の代表的な企業は、ニオ(NIO)リー・オート(LI)シャオペン(XPEV)です。

 6月の販売台数をみると、ニオが前年同月比116%増、5月比20%増の8,083台。リー・オートが前年同月比321%増、5月比78%増の7,713台。シャオペンが前年同月比617%増、5月比15%増の6,565台に増加しました。

 特に伸びが顕著だったリー・オートは「Li ONE SUV」のアップグレード版が寄与し、2021年2Qのガイダンス自体も上回る着地になったもようです。3社合わせると販売台数は2万2,361台となり、テスラの中国国内向け販売台数2万1,936台(※5月)と肩を並べる規模まで成長しています。

 最近の株価はこの動向を反映しているとみられ、5月以降の動きをみると、ニオ、リー・オート、シャオペンの株価が上昇傾向にあるのに対し、テスラの伸びは緩やかです。「電気自動車といえばテスラ」という環境から変化し、競争状態は激化しつつある様相です。

<電気自動車銘柄の相対株価推移>

※2019年末=100、ただしリー・オートは2020年7月29日を100、シャオペンは2020年8月26日を100

出所:ブルームバーグより楽天証券作成、7月7日まで

 テスラと3社の業績比較は以下の通り。3社の規模はテスラ全体と比較するとまだ小さく黒字化もしていませんが、増収率期待はテスラよりも高い状態です。特にニオは世界展開に向けて動きだしており、仮にそれが軌道に乗り黒字化が見えてきた場合は、テスラ並みの評価になる可能性があります。 

<テスラと中国新興3社の簡易業績比較>

出所:ブルームバーグより楽天証券作成
※予想:ブルームバーグコンセンサス(7月8日取得)
※成長率予想は現地通貨ベース
※株価:テスラが7月7日、他の3社は7月8日ベース

 一方、テスラの成長戦略が再度注目を浴びる可能性もあります。テスラの足元の販売台数推移は堅調で、2021年1-6月期の販売台数は約38万6,000台となり、前年同期から2.2倍増加しました。2021年通期の目標である前期比1.5倍の75万台に向けてしっかり進んでいます。

 販売台数の増加に寄与しているのは、値ごろ感のある「モデル3」で、高級SUVの「モデルX」と高級セダンの「モデルS」についてはモデルチェンジの影響で生産・販売の抑制が続いています。ただし、6月から「モデルS」の納車を始めており、今後は魅力を刷新した高単価のモデルがニオなど他社との差別化を促進する可能性があります。

 さらに、将来的な事業としてスーパーコンピューター「Dojo」が挙げられます。これはテスラの自動運転用の機械学習モデルをトレーニングするためのスーパーコンピューターですが、会社側は将来的に外部企業に公開する方針を示しています。