16日、米連邦公開市場委員会(FOMC)は約9年半ぶりとなる利上げを発表しました。昨年10月に量的金融緩和が終了して以来、1年以上「利上げはいつか」が市場のテーマとなり、時には利上げに対する警戒感から、また時には利上げ時期に対する不透明感から株式相場が上昇しなくなったり、下落したり、という展開が続いてきました。ウォール街でも、3月の利上げを予想するエコノミストは一部だったにしても、6月や9月を予想するエコノミストは8割以上に上る時もありました。そういう意味では、これほど長期間に渡って市場に織り込まれ、満を持して実施された利上げも珍しいと思います。
金融引き締めに対する市場参加者の反応といえば、2000年前半にかけての利上げがその後ナスダックを中心とする株式相場の急落につながったり、また2006年半ばにかけての利上げから約1年経って金融危機が始まったりと、やはり警戒感が真っ先に来るのは当然でしょう。他の条件が一定であれば、金利が上昇すれば相対的に株式の魅力が薄れますし、今回の景気回復局面は既に7年と、過去と比べても長いものとなっていますから、いつ後退局面に差し掛かってもおかしくない、という警戒感もあると思います。実際私も、米国株式相場を本格的に下落させるのは、中国経済でもギリシャ危機でも地政学的リスクでもなく、結局はアメリカの景気が後退局面に入る時であり、それは今回も恐らく、最終的には金融引き締めが起こす現象だと思います。
一方で現段階で「利上げを気にし過ぎるリスク」は非常に大きいものであることも忘れてはなりません。1994年から2000年にかけての金融引き締め局面においては、S&P500指数は約3.3倍になりましたし、2004年から2007年にかけても40%近く上昇しています。そもそも利上げをする理由は景気が良いからであり、少なくとも金融引き締め局面の初期においての投資スタンスは順張りであるべき、ということです。しかし前述の通り、金融引き締めが進んでいくと、いずれは株価が下落し始めたり、実体経済がスローダウンしてきたり、ということが起こります。要するに重要なのは、この利上げの初期の場面から警戒感を抱くことではなく、いつまで株価が上昇するのかを注視しておく、ということなのです。
これは一見難しい判断のように見えますが、実はそれほど難しいことではありません。一言で申し上げれば、「イールドカーブ(利回り曲線)が右肩下がりになる、又は長短金利差が逆転するまで」なのです。通常、金融引き締めの初期の場面では、景気が良いという株式にとってプラスの影響が、金利が上昇するというマイナスの影響を上回ります。しかし金融引き締めが進んでいくとやがて金利が上昇するという株式にとってマイナスの影響が、景気が良いという株式にとってプラスの影響を上回るようになります。即ち重要なのは、マイナスの影響がプラスの影響を上回る時点をどうやって見付けるか、ということで、その時点を見付けるに当たって大きな参考となるのが、イールドカーブの傾きです。