失業率は下がって当然。賃金データに「まやかし」?
今後の雇用統計では、失業率と同じかそれ以上に、平均賃金の上昇率が注目されることになるでしょう。失業率は低下(改善)傾向がはっきりしてきました。しかし、その分サプライズ要素が減ったわけで、マーケットの関心は薄れています。
失業率がどれだけ下がるかよりも、賃金がどれだけ上がるか、これが次のテーマになるかもしれません。賃金上昇は消費拡大を促し、消費拡大は景気回復につながります。景気回復とインフレには関係があり、相場を動かす長期金利の動向にもかかわってきます。
2月の平均労働賃金は前年比+5.3%。3月は+4.5%の予想。第2四半期の米国の消費拡大を予感させる強い数字です。しかし、大喜びしてはいけません。雇用統計のデータは実体を正確に反映していないという分析があるからです。
1年前の米国の労働市場では、コロナ禍のせいでサービス業などに携わる従業員が大量にレイオフされました。これら低賃金で働く人たちが一斉にデータから外れたため平均値が上昇したのです。統計上は労働賃金が増えたように見えますが、もちろんコロナで給料がアップしたのではありません。下のグラフを見ると、昨年4月の平均労働賃金が3%台から8%へ跳ね上がっていますが、それも平均値がずれたせいだと説明できます。
最新のデータによると、レジャーと接客業の雇用が35.5万人も大幅増加しています。コロナ禍でレイオフされた人たちの職場復帰に伴い、雇用統計上の労働賃金の平均値も「下方」修正されていくことになります。
平均値の低下に加えて、さらに今後半年間はベース効果もマイナス要素として加わります。ベース効果とは、前年の数値が上昇率の数字に影響してしまうこと。分母が大きければ上昇率は小さくなります。平均労働賃金の伸び率は前年比で大幅下落することになりそうです。
平均労働賃金は、大幅上昇の期待とはうらはらに、低水準で安定する可能性が高いです。したがって賃金上昇がインフレに与える効果も限定的ということになります。FRB(米連邦準備制度理事会)は、インフレは一過性であり、放置しても問題ないとの見解を示しています。