トルコリラ急落の波及懸念
今週に入っても日経平均は続落し、2万9,000円を割れました。株安は、米銀の資本規制緩和が3月末に終了することが決まったことや、日銀のETF買い入れの見直しに加え、ルネサスエレクトロニクス社の半導体工場の火災が悪材料として影響しているようです。この株安を受けてドル/円は頭の重たい展開が続いていますが、その背景にはもう一つ注目する材料があります。20日にトルコの中銀総裁が更迭され、ハト派の総裁就任によって、週明け、トルコリラが急落したことです。
トルコリラの急落で投資家の脳裏を横切ったのは、トランプ前政権との関係悪化でトルコリラが急落した2018年8月の「トルコショック」です。今回、一時、15%前後急落しましたが、「トルコショック」以来の大幅な下落率でした。
今回の急落は一時的な現象とは捉えがたい面もあります。コロナ感染拡大が経済に及ぼしている影響や、米長期金利の上昇とドル高の影響が一気に噴き出した可能性もあります。今後のトルコリラの動向を注目すると同時に、他の新興国も同じような事情であるため、他の新興国市場の株安、通貨安に伝播しないかを注視する必要もあります。2018年の時は、アルゼンチン、ロシアなどの新興国通貨だけでなく、貿易と投資でトルコとの関係が深いユーロも売られました。これら新興国市場への影響は、ドル/円にとっては円高要因となりそうです。
3月末に向けて蠢く円高要因
FOMCは無事に終えましたが、その後、3月末に向けて相場環境が少し変化してきたようです。米銀の資本規制緩和終了の影響は限定的との見方もありますが、3月までは保有資産の見直しによる米長期国債への影響の懸念から米長期金利は下がりづらくなっているかもしれません。4月に入ると、その懸念が払拭(ふっしょく)されることによって米長期金利の上昇圧力も和らぎ、それと同時にドル/円の支えもなくなるかもしれません。
欧州主要国では復活祭に向けて規制を強化したため、ワクチン接種の遅れも加わり、世界経済の正常化が遅れるとの見方から、長期金利は低下し、株は弱含み、原油も今月の高値から10%超の下落となっています。そのためクロス円が下落していることもドル/円の頭を重くしています。
3月は、欧米の企業や投資家にとっては四半期末、日本の企業にとっては年度末となります。欧米投資家の保有資産の調整・見直し(リバランス)が、今週から来週にかけて行われる可能性があります。もし、実施される場合は、買われ過ぎの資産は売却され、売られ過ぎの資産は買われることになるため、債券買い(金利低下)・株売りのリバランスになるとの見方となっています。また、日本企業にとっては期末要因によるレパトリエーション(資金の本国回帰)や実需の特殊玉も予想されます。これらの実施タイミングや規模はわかりませんが、期末要因として相場が動くこともあるため、今週から来週にかけては警戒心を持ってマーケットに臨む必要があります。