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『テーパータントラム』とは、量的金融緩和の縮小に対する金融市場の混乱のことです。2013年5月に、当時のバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が量的金融緩和の縮小を示唆し、長期金利が急騰、新興国通貨が下落するなど、金融市場が混乱しました。足元では米国の景気回復期待が高まっていますが、FRBは『テーパータントラム』が再発して景気回復の妨げとならないよう、慎重に対応していくと見られます。
【ポイント1】2013年の「バーナンキ・ショック」により金融市場は混乱
『テーパータントラム』は、量的金融緩和の縮小(テーパリング)に対する懸念により、金融市場がかんしゃく(タントラム)を起こしたように混乱することを指します。2013年5月には、FRBのバーナンキ元議長が市場の想定より早いタイミングで、金融危機以降実施していた資産購入規模の縮小を示唆しました。これにより、それまで大規模な金融緩和に支えられていた資金の流れが急激に変わり、長期金利の急騰や新興国市場からの資金流出による通貨安などが生じました。
当時、FOMC(米連邦公開市場委員会)が四半期ごとに公表しているドット・チャート(メンバーが予想する政策金利の予想分布)では、2015年12月までに3回の利上げが予想されていました(2013年3月時点)。しかし、「バーナンキ・ショック」と呼ばれるこの『テーパータントラム』を受けてFRBは金融市場との対話に苦心することとなり、実際の初回利上げは2015年12月の会合まで後ろ倒しとなりました。
【ポイント2】景気過熱による早期引き締め観測
2020年以降、コロナ禍を受けてFRBは大規模な金融緩和政策を実施しました。積極的な財政政策も相まって、今後景気回復が期待されています。さらに、新型コロナワクチンの接種拡大による景気の正常化に加え、バイデン新政権による米国の追加経済対策などを受けて、景気回復の度合いが想定よりも速くなり、むしろ景気過熱を招くのではないかという懸念もくすぶっています。
金融市場の物価予想を示す指標の一つである期待インフレ率(10年先)は、2020年末には約2.0%でしたが、2月半ばにかけて2.2%を超えて推移しました。急激な物価上昇によりFRBが早期に金融緩和政策を巻き戻した結果、『テーパータントラム』が生じることを市場は警戒しています。
【今後の展開】FRBは『テーパータントラム』に配慮
足元、自動車など一部の項目では価格上昇がみられていますが、需給のひっ迫を反映した一時的なものであり、持続的なインフレに必要な賃金上昇には至らないと考えられます。パウエルFRB議長も、2月下旬の議会証言において、物価は上昇すると予想されるが持続的とも高水準になるとも予想していない旨を示し、量的金融緩和縮小の時期に関してはガイダンスを通じて、市場に明確に伝達する意向を強調しています。『テーパータントラム』の発生が景気回復の足かせとならないよう、FRBは引き続き配慮していくと予想されます。