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本レポートに掲載した銘柄:アプライド マテリアルズ(AMAT、NASDAQ)シノプシス(SNPS、NASDAQ)

アプライド マテリアルズ

1.2021年10月期1Qは24.0%増収、23.1%営業増益

 アプライド マテリアルズは世界最大の半導体製造装置メーカーであり、前工程(ウェハプロセス)の重要装置を生産、販売しています。プラズマCVD(プラズマを使った薄膜形成装置)、PVD(物理的気相成長による成膜装置)、スパッタリング装置(物理的気相成長法により金属膜を生成する)、CMP装置(ウェハ表面の研磨装置)でシェアトップです(表2)。

 アプライド マテリアルズの2021年10月期1Q(2020年11月-2021年1月期)は、売上高51億6,200万ドル(前年比24.0%増)、営業利益12億8,300万ドル(同23.1%増)となりました。新型コロナ関連費用、物流費用の増加は売上総利益率の改善で吸収できましたが、一時的な希望退職募集費用(ディスプレイ・周辺事業)があったため、営業利益率は前1Qよりも低下しました。ただし、この一時的費用を除くと好調な業績でした。

表1 アプライド マテリアルズの業績

株価(NASDAQ)    108.24ドル(2021年3月4日)
時価総額    99,040百万ドル(2021年3月4日)
発行済株数    915百万株
単位:百万ドル、ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済株数は完全希薄化前(Basic)。

表2 半導体製造装置の主要製品市場シェア(2019年)

出所:会社資料、報道、ヒアリングより楽天証券作成。一部楽天証券推定。

2.セグメント別動向-ファウンドリ、ロジック向けが順調に伸びる-

 セグメント別に見ると、今1Qのセミコンダクター・システムズ(半導体製造装置)は売上高35億5,300万ドル(前年比26.3%増)、営業利益12億6,100万ドル(同37.8%増)となりました。分野別に見ると、ファウンドリ・ロジック・その他向け売上高が20億6,100万ドル(前年比7.7%増)となり、高水準の売上高が続きました(グラフ1参照)。

 また、DRAM向けは6億400万ドル(同43.1%増)、フラッシュメモリ向けは8億8,800万ドル(同85.7%増)と好調でした。特にフラッシュメモリ向けはNAND向け大型投資があったもようです。

 製品別に見ると、今1Qは前期に続き、エピタキシャル成膜装置、熱処理成膜装置、PVD(いずれもシリコンウェハ上に成膜するための装置)、CMPなどが順調に伸びました。特にPVDが好調でした。

 また、会社側は2021暦年はCVD、エッチング、プロセス診断・制御システム、新型パッケージシステム(従来のパッケージは回路を描画した後のシリコンウェハをチップに切り出した後に被せていたが、最新のパッケージ技術ではウェハ上でパッケージングする)が有望と予想しています。

 アプライド・グローバル・サービス(保守・サービスと半導体製造装置とソフトウェアを組み合わせたソリューション構築)は、売上高11億5,500万ドル(同15.8%増)、営業利益3億3,200万ドル(同19.4%増)となりました。半導体製造装置の伸びに合わせて順調に伸びました。

 ディスプレイ・周辺市場は、売上高4億1,100万ドル(同23.8%増)、営業利益6,500万ドル(同71.1%増)と伸びましたが、引き続き低水準でした。

 地域別売上高を見ると、韓国向けが大きく伸びました。台湾向け、中国向けも高水準を維持しました。

表3 アプライド マテリアルズ:セグメント別業績(四半期)

単位:百万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
注:四捨五入のため合計が合わない場合がある。

表4 アプライド マテリアルズ:セグメント別業績(年度)

単位:百万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
注:四捨五入のため合計が合わない場合がある。

グラフ1 アプライド マテリアルズ:セミコンダクター・システムズの分野別売上高

単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

表5 アプライド マテリアルズの分野別売上高

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
注:分野別売上高は会社側開示の構成比より楽天証券計算。

表6 アプライド マテリアルズの地域別売上高

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

3.2021年10月期も業績好調が予想される。

 会社側の今2Q(2021年2-4月期)ガイダンスは、売上高51.9~55.9億ドル(前年比31.2~41.3%増)です。このうちセミコンダクター・システムズは38.5億ドル(同50.0%増)、アプライド・グローバル・サービスは11.4億ドル(同12.0%増)、ディスプレイ・周辺市場は3.7億ドル(同1.4%増)となっています。

 会社側は米国会計基準ベース(GAAPベース)の利益予想を示していませんが、non-GAAPベースの今2QEPSは同約70%増としています。

 今1Qに続き今2Qも好調な業績が予想されます。そして、半導体設備投資の大型ブームが到来しており、このブームが2023年頃まで続くと予想されるため、アプライド マテリアルズも2021年10月期、2022年10月期と好業績が予想されます。楽天証券では、2021年10月期を売上高220億ドル(同27.9%増)、営業利益61億ドル(同39.7%増)、2022年10月期を売上高264億ドル(同20.0%増)、営業利益78億ドル(同27.9%増)と予想します。前回の2021年10月期売上高205億ドル、営業利益55億ドル、2022年10月期売上高240億ドル、営業利益67億ドルから上方修正します。

4.今後6~12カ月間の目標株価を110ドルから150ドルに引き上げる。

 今後6~12カ月間の目標株価を前回の110ドルから150ドルに引き上げます。楽天証券の2022年10月期予想EPS 7.50ドルに、半導体設備投資の大型ブームが到来していること、その中でアプライド マテリアルズは中核企業の一つであることを考慮して、想定PER20倍を当てはめました。前回は想定PERを20~25倍としましたが、金利上昇を考慮し想定PERを引き下げました。引き続き中長期で投資妙味を感じます。

 なお、アプライド マテリアルズは、現在KKR傘下の半導体製造装置メーカー、KOKUSAI ELECTRIC(2018年に日立国際電気から分社しKKRの傘下に入った)に対して買収作業中です。買収価額は35億ドル(2021年1月に従来の22億ドルから引き上げた)、買収期限は2021年3月19日(元の期限は2020年12月30日)。現在は中国当局の審査結果待ちです。

 KOKUSAI ELECTRICは、アプライド マテリアルズがシェアが低いか手掛けていないCVD、酸化/拡散成膜装置の大手であり、買収に成功すればアプライド マテリアルズの成長に寄与すると思われます。