シノプシス
1.2021年10月期1Qは16.3%増収、68.2%営業増益
シノプシスは世界最大手のEDA(Electronic Design Automation。ロジック半導体の設計用ソフトウェア)の専業メーカーです。この分野ではシノプシス(SNPS、NASDAQ上場)、ケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS、NASDAQ上場)、メンターグラフィックス(シーメンス子会社、未上場)の3社が世界的な大手であり、半導体設計にはこの3社のシステム以外は使えないと言われています。この3社ともアメリカ企業です。
シノプシスの2021年10月期1Q(2020年11月-2021年1月期)は、売上高9億7,000万ドル(前年比16.3%増)、営業利益1億4,800万ドル(同68.2%増)となりました。業績好調でした。
売上高をセグメント別に見ると、EDAが5億3,600万ドル(同8.7%増)となりました。前4Q(2020年8-10月期)に比べ伸びは鈍化しましたが、順調に伸びています。先端ロジック半導体の微細化が、7ナノ(2018年~)→5ナノ(2020年~)→3ナノ(2022年~)と進むにつれロジック半導体の設計が難しくなり、5Gスマホ、高性能パソコン、高性能サーバー向け半導体などの開発需要も多くなったため、EDAの需要も堅調に増えています。
IP&システムインテグレーションは3億4,000万ドル(同33.3%増)となりました。様々なロジック半導体に関するIP(知的財産権、各種ロジック半導体や周辺回路の設計図のモデル)を数多く揃えて、システムインテグレーションと一緒に販売しています。この事業は、先端半導体から汎用半導体までの開発ニーズの増加とともに好調になっています。
ソフトウェア・インテグリティ(セキュリティ管理用ソフト)は9,200万ドル(同7.0%増)でした。堅調でした。
地域別売上高を見ると、主力地域の北米を始め、全地域向けが前年比増収となりました。特に中国向けは前年比73.1%増と大きく伸びましたが、これはファーウェイ向け以外の顧客向けが伸びたもようです。シノプシスは昨年8月時点でファーウェイとの取引を停止しています。
表7 シノプシスの業績
表8 シノプシス:プロダクトグループ別売上高(四半期)
表9 シノプシス:プロダクトグループ別売上高(年度)
表10 シノプシスの地域別売上高
2.会社側ガイダンスでは、2021年10月期は20%以上の営業増益を見込む。
会社側ガイダンスでは、2021年10月期2Qは売上高9.7~10.0億ドル(前年比14.1~23.7%増)、営業利益1.69~1.81億ドル(同34.1~43.7%増)と予想されています。また、2021年10月期通期の会社側ガイダンスは、売上高40.0~40.5億ドル(同8.5~9.9%増)、営業利益7.66~7.71億ドル(同23.5~24.4%増)となっています。前回のガイダンスから売上高は変わらず営業利益がやや下方修正されていますが、今期も順調という予想です。
一方で、今1Q実績と今2Qガイダンスを見ると、各々前年比10%以上の増収と30%以上の営業増益になっています。実際、今1Q決算に関する会社側説明を考慮すると(前述)、微細化の進展によって、半導体設計ソフトとその周辺ビジネスは今期、来期とも好調と予想されます。
そのため楽天証券では、今回の業績予想を、今期2021年10月期は売上高43.0億ドル(前年比16.7%増)、営業利益9.0億ドル(同45.2%増)、2022年10月期は売上高50.0億ドル(同16.3%増)、営業利益12.0億ドル(同33.3%増)とします。前回予想の2021年10月期売上高41.0億ドル、営業利益8.0億ドル、2022年10月期46.0億ドル、営業利益10.0億ドルから上方修正します。
3.今後6~12カ月間の目標株価を290ドルから310ドルに引き上げる。
今後6~12カ月間のシノプシスの目標株価を前回の290ドルから310ドルに引き上げます。楽天証券の2022年10月期EPS予想7.21ドルに、成長性とこの企業の希少性を考慮した想定PERレンジ40~45倍を当てはめました。前回の想定PERレンジは50~55倍でしたが、長期金利の上昇を考慮し想定PERレンジを引き下げました。
引き続き中長期の投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:アプライド マテリアルズ(AMAT、NASDAQ)、シノプシス(SNPS、NASDAQ)