償還率100%以上が6割超。株とは違う値動きで分散投資効果も

――株式投資同様、クラウドファンディングには出資した資金に元本保証はありませんが、リスクについてはどう考えたらいいのでしょうか?

小松 出資した事業が想定通りの成果を出すことができなければ、出資して戻ってくるお金が元本を割り込むことはあります。

 当社の原点である音楽CDの証券化の例でいうと、1万枚売れたら損益分岐点に到達し、1万5,000枚ぐらい売れて利益が出るだろうと予想していたCDの売上が、残念ながら1万枚に届かなかったりすると、元本割れになります。

 当社としては過去の売上実績なども精査して、今年度まではこれぐらいの売上だから、今後はこれぐらいの売上を達成できるという事業計画を事業主に立ててもらい、それを審査して、有望と思えるものしかファンドとして組成していません。

 しかし、事業計画に甘さがあったり、出資金というニューマネーが入ることで売上がさらに増えるだろうという目算が外れる場合もあります。

 最近は予期せぬ地震や台風などの自然災害もリスク要因ですし、当然ながら2020年以降は新型コロナウイルス感染症のまん延が、観光や地方活性化を目指すファンドにとっては逆風になっています。

 2020年9月現在で、すでに566本のファンドが償還されていますが、償還率が100%以上、すなわち利益が出たファンドは356本で62.9%。これを高いとするか、低いとするか、特典も考えれば満足できるか、というのは、投資する側のリスク許容度や、共感度に寄ることになると思います。

――それぞれのファンドは、国内の景気や株式市場の動向と、成績が連動するということはあるのでしょうか。

小松 当社のファンドは確かにコロナショックなど景気とは連動性がありますが、日経平均株価など株式市場自体とはさしたる相関性はありません。

 やはり1事業ごとにファンドを形成しているため、その成績は、株式市場の全体動向にはあまり関係ない点が、上場株式を投資対象にした通常の投資信託などとは違うところです。そういう意味では、資産のポートフォリオの一部として取り入れて、リスクを分散させる効果はあると思います。

――株式投資では「どの企業が今後、有望か」を基準に投資先を選びます。その点は同じですが、それに加えて「その事業に共感できるか」「その事業を応援したいか」という視点があることが、投資型クラウドファンディング最大の特徴です。

小松 事業に付随して特典がもらえるところは、個人投資家にはおなじみの株主優待株投資と同様の楽しみ。「その事業がうまくいくことで、投資家や出資先だけでなく、事業が行われる地域全体が活性化する」という意味ではふるさと納税と似ている面もあります。

 株主優待株投資とふるさと納税を足して2で割って、そこに事業への共感や地域や地球環境をよくしたいという思いをプラスしたもの、それが投資型クラウドファンディングといえるかもしれません。

■クラウドファンディング入門
前編:クラウドファンディングって?自分の「共感」に直接投資できる!
中編:投資型クラウドファンディングの選び方:株と値動きが違う「分散投資効果」も
後編:社会をみんなで守るインパクト投資。ローカル鉄道、酒造、貧困国支援まで

プロフィール

この方に聞きました

小松 真実さん
ミュージックセキュリティーズ
代表取締役

早稲田大学大学院修了。2000年12月ミュージックセキュリティーズ合資会社設立、2001年11月ミュージックセキュリティーズ有限会社設立、2002年5月株式会社化し代表取締役就任。2013年ダボス会議で知られる世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選出。2014年一般社団法人 第二種金融商品取引業協会理事に就任。