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 株式市場では、『理想買い』と『現実買い』という言葉があります。株価は本来、企業の業績が良くなれば上がり、悪くなれば下落するものです。企業の業績には予想や予想に対する市場の思惑があります。企業の業績が良くなるには、事業環境の変化、新製品の開発、新工場の建設などさまざまな要因が考えられます。これらの要因に対する投資家の思惑(=理想)と、それが実現したという事実(=現実)が、株価を買う原動力となります。

【ポイント1】『理想買い』と『現実買い』

 相場の世界には『理想買い』と『現実買い』という言葉があります。『理想買い』とは先行きの企業業績に対する期待感に基づき株式を買うことを言います。たとえ足元の業績が悪かったとしても、規制緩和が進んだり、有力な新商品が開発されたりすれば、投資家は先行きの業績が改善すると考えます。一方、『現実買い』は好業績の発表など実現した材料に基づき株式を買うことを言います。これまで確信が持てなかった新商品が実際に発表され株が買われることもありますし、新商品の開発が期待外れとなると株価は下落することもあります。

【ポイント2】テスラに見る『理想買い』

 米国EV(電気自動車)メーカーのテスラの株価推移を見てみたいと思います。

 同社は2003年に設立された新興企業で、2010年6月、米国ナスダック市場に上場しました。上場当初から有望なベンチャー企業として注目されてはいましたが、一方で、有力なモデルを開発できるか、大量生産ができるかなどさまざまな点が懸念されていました。

 しかし、2012年に代表的なモデルSが発売され、その後は順調に生産が拡大しました。2019年には中国工場が稼働し、2020年には初の最終黒字を達成しており、今後、さらなる業績拡大が期待されています。

【今後の展開】今後の株式市場は『理想買い』から『現実買い』へ

『理想買い』と『現実買い』は相場全体の動向にも当てはまります。世界の株式市場は、昨年、新型コロナ感染拡大による景気見通しの急変により3月にかけて急落しました。しかし、その後、各国・地域による積極的な金融・財政政策や新型コロナワクチン開発による経済正常化を期待し、株価は急回復してきました。

 新型コロナワクチン接種の普及も進み、経済活動・企業業績は徐々に回復してきました。ここまでの上昇相場が『理想買い』とすると、さらなる経済成長・企業業績改善という『現実買い』への移行が期待されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。