たまった鬱憤も!?第5次“スーパーサイクル”が本格的に発生するための条件とは!?
先週、“コモディティの新たなスーパーサイクル”という見出しが、主要メディアで踊りました。この場合のサイクルとは、定期的に訪れる価格の波ではなく、不定期で発生する数十年かけた大規模な価格の上昇と下落、という意味です。
米金融大手は、足元、コモディティのスーパーサイクルが発生しているかもしれない(Commodities May Have Just Begun a New Supercycle.)、として、過去100年間でコモディティのスーパーサイクルは4度発生し、4度目は1996年から2020年(上昇局面が96年から08年の12年間、下落局面 08年から20年の12年間)だった、としました。
例えば、超長期的なデータを確認することができる原油相場を振り返ると、以下のようになります(1861年から2019年)。米金融大手が述べた、1996年から2020年までの間、コモディティ(商品)の主要銘柄の一つである原油は“スーパーサイクル”を演じていました。
図:原油価格(長期) 単位:ドル/バレル ※2019年を基準に実質価格に換算
米金融大手が“4回目”とした、1996年から2020年のスーパーサイクル発生時、原油相場の上昇・下落のきっかけは何だったのでしょうか。
上昇要因は、“中国爆食”と揶揄された新興国の台頭と、リーマンショック後に始まった米国をはじめとした先進国の大規模な金融緩和だったと考えられます。下落要因は、上昇の逆で、新興国の景気不透明感の浮上と、米国の金融緩和の終了と考えられます。
それ以前で言えば、原油の場合、1980年前後にスーパーサイクルがあります。この時の上昇要因は、それまで欧米の石油メジャー(国際石油資本)に利権を独占されてきた中東産油国が主導権を取り返し、原油価格をつり上げたこと、そして中東産油国で地政学的リスクが連鎖的に発生して供給減少懸念が浮上したことなどです。
下落要因は、中東産油国が消費国側の意向を受けいれたことや、各種リスクが鎮静化する方向に向かったことなどが挙げられます。
このように考えれば、一口に“スーパーサイクル”といっても、一つ一つ、きっかけが異なることがわかります。また、発生するタイミングが定期的に訪れるものではないこと、上昇開始から下落終了までの期間がサイクルごとに異なることもわかります。
では今回、仮に本当にスーパーサイクルが起きると仮定した場合、そのきっかけは何になると考えられるのでしょうか。筆者は、過去とは異なる、“現在の世界情勢ならではの複数の材料が同時発生した場合”、スーパーサイクルが起きる可能性があると、感じています。
第5次コモディティ“スーパーサイクル”が発生するための条件(筆者の考え)
上記のとおり、[1]から[3]までの3つの条件が同時に、長期間、継続した場合、現在その“芽”が出始めている5回目のスーパーサイクルが、本格的に発生する可能性があると、考えています。ただ、どれか1つでも抜け落ちると、発生する可能性は大きく低下すると考えられます。
とはいえ、現在、国家・企業・個人問わず、世界的な環境配慮ブームが起きていること([1]に関連)、ワクチンが世界各地に行きわたるにつれて、今後、コロナで自粛を余儀なくされて、たまった鬱憤が噴出するように消費活動が活性化する可能性があること([2]に関連)、など、1980年前後や前回の2000年前後のスーパーサイクル発生時にはない、今ならではのテーマが存在します。
景気回復や雇用情勢の改善のために行われている金融緩和が空前のカネ余りをさらに膨張させ、コモディティ市場にさらに資金が流入する可能性があること、同時に、金融緩和の恩恵を享受する人(株式を大量に保有している人)とそうでない人との間に格差が発生し、1月に発生した「共闘」のような、個人投資家起因の上昇要因が発生する可能性があること([3]に関連)も、今ならではのテーマです。
また、[1]や[2]を背景に、環境配慮関連銘柄の銀やプラチナ、そして、半導体やその他の電子部品に使われるレアメタルの需要が急激に増大した場合、これらの金属の供給が追い付かなくなる可能性もあります。
以前の「コロナ禍で金(ゴールド)が自我に目覚める!?貴金属市場の定石と定石外とは!?」で述べたとおり、環境配慮が本格化すれば、銀やプラチナに上昇要因が発生する可能性があります。
現在、以前のスーパーサイクル発生時に無い、世界規模の材料が複数あります。このように考えれば、条件が整った状態が数年単位で長期化することが必要であるものの、第5次コモディティ“スーパーサイクル”が発生する可能性は、ゼロではないと、現時点で筆者は考えています。
長期的視点で、コモディティ価格の動向を見守る、良いタイミングに来ていると感じます。とかく、コモディティ(商品)というと“短期売買”と連想されがちですが、スーパーサイクルが語られるような今だからこそ、長期的視点でコモディティを追ってみるもの、面白いのではないでしょうか。
[参考]コモディティ(商品)関連の具体的な投資商品例
投資信託
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Aコース(為替ヘッジあり)
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Bコース(為替ヘッジなし)
外国株
インベスコDB コモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド(DBC)
iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN(DJP)
iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト(GSG)