先週末の米国株式市場は、雇用統計の結果を好意的に捉え、米国債利回りと共に上昇しました。2月の雇用統計は市場予想を大幅に上回る着地。寒波到来の時期と重なったものの、外食などで雇用が増加しました。一方、失業者数はいまだコロナ禍前の約2倍の水準。平均時給は上昇しているものの、伸び率は前年同月比5.3%増と、1月の上昇率と同水準でした。この内容は、株式市場から、雇用は回復途中だが、景気の過熱感を示唆する状況ではないと捉えられたようです。足元では、FRB(米連邦準備制度理事会)が物価の想定外の上昇をコントロールできなくなるといった懸念が浮上していましたが、賃金上昇に過熱感が出ていないなか、その懸念は杞憂(きゆう)だとの考え方が広がっているとみられます。

 こうしたなか、売られやすいグループは引き続きバリュエーションが高い銘柄です。特に、実績に乏しく、長期的な成長ストーリーがポイントになっていた銘柄は不利です。景気の過熱感に対する警戒が和らいだとしても、経済の成長を織り込んだ米国債利回りの上昇が続いた場合、高バリュエーションの説明が困難になるためです。特に、今ではなく将来稼ぐというストーリーを掲げていた銘柄は、ボラティリティの激しい展開になるとみられます。

 一方、この相場で保有する銘柄としては、配当利回りが高いバリュー株が挙げられます。代表的な銘柄は医薬関連のアッヴィ(ABBV)ファイザー(PFE)ギリアド・サイエンシズ(GILD)です。また、食品系ディフェンシブ銘柄のケロッグ(K)キンバリー・クラーク(KMB)も高配当利回りです。懸念が後退したとはいえ、景気の過熱感に対する警戒は今後もくすぶり続け、相場が方向性を欠く展開になることも想定されるため、事業の実績と配当、PER(株価収益率)水準から評価できる銘柄を紹介します。

アッヴィ…免疫学、白血病など、特殊治療を要する分野の医薬品を手掛ける。
今期予想PER:8.6倍、今期予想配当利回り:4.9%

ファイザー​…腫瘍分野の医薬品、ワクチンなどを手掛ける。
同10.2倍、4.6%

ギリアド・サイエンシズ​…HIV、肝臓疾患向けの医薬品などを研究・開発。
同8.9倍、4.3%

ケロッグ​…シリアルメーカー。
同14.4倍、4.0%

キンバリー・クラーク​…紙おむつメーカー。
同16.5倍、3.5%