LNG急騰による影響は限定的、21年の販売増と利幅改善に期待

 年末年始のLNG(液化天然ガス)価格の急騰で、ガス供給(都市ガス)銘柄の利幅悪化懸念が高まっているが、BOCIは急騰局面が2週間程度で終息したことを理由に影響は限定的とみている。それよりむしろ、国家石油天然気管網集団(パイプチャイナ)傘下のガスパイプラインやLNGターミナルの使用が通期にわたって可能となることで、各社のガス調達面の柔軟性が増すと指摘。結果的にコスト効率と利幅の改善につながる見通しを示した。ガス供給セクター全体の先行きに対し、強気見通しを継続している。

 アジアのLNGスポット価格は年末年始に急騰し、一時は100万BTU=約20米ドルと、記録的な高値を付けた。BOCIは原因として、産業界の需要増や川上の供給統括会社の変更、パイプライン経由のガス輸入量の縮小に伴う冬場前の供給不足、ガス貯蔵能力の目標未達などを挙げている。

 ただ、スポット価格の急騰が続いたのは2週間程度であり、BOCIは都市ガス各社の20年の利幅に及ぼす影響は限定的との見方。各社とも、「寒い冬」が予想されていた20-21年冬の需要増に、早期に備えていた点もマイナス影響の抑制につながるとみる。また、それ以上に、中国の輸出好調を受けた工業顧客の旺盛なガス需要に目を向け、ガス供給セクターへの恩恵を予想。実際のガス販売量は、各社が事前に示した20年の販売見通しを上回る可能性が高いとしている。

 続く21年には、ロシアからの天然ガス供給が前年の2倍以上に増え、川上の供給量が拡大する見込み。21年に入り、パイプチャイナ傘下のLNGターミナル6カ所の使用権を獲得した企業が国内石油メジャー3社以外に49社に上り、20年10-12月の7社から大きく増加。うちガス供給事業者は3社から10社に増えたこともプラス(ほかにグローバル石油企業など)。川上のガス供給の拡大と供給方式の多様化は、コスト管理の改善を後押しし、利幅改善にもつながる要因となる。

 21年上期にはまた、各社のガス販売量とガス管接続業務が加速する見込み。新型コロナウイルスのまん延を受けた都市封鎖で、20年1-3月の実績が極端に低く、販売量、接続数ともに急増する可能性が高い。

 BOCIはカバー銘柄のうち、北京控股(00392)、中国ガス(00384)、新奥能源(02688)、昆侖能源(00135)の株価の先行きに強気見通しを付与している。うち中国ガスに関しては、新たな「スマート・マイクログリッド」事業が成長エンジンになるとの見方。川上のガス供給増と「煤改気」(暖房燃料の石炭から天然ガスへの切り替え)を背景に販売量の急増を見込む。昆侖能源に関しては川下事業の積極的な開拓を理由に、販売増を予想。パイプライン資産の売却やガス生産事業からの撤退計画で、事業構成が大手に近づくとみて、株価バリュエーションもこの先、大手に並ぶ可能性を指摘している。