サービス収入伸び率が21年に加速へ、企業のデジタル化を5G普及が追い風
BOCIは中国の通信キャリアのサービス収入および利益の伸びが、21年に加速するとみている。企業の旺盛なデジタル化需要やモバイル部門のARPU(加入者1人当たり月額収入)の拡大見通しが背景。通信セクターに対する強気見通しを継続し、個別では21年の予想増益率に基づき、チャイナ・ユニコム(00762)、チャイナ・テレコム(00728)、チャイナ・モバイル(00941)の順で選好するとした。この3社の21年の予想増益率はそれぞれ前年比14%、8.4%、4.7%になるという。ただ、チャイナ・モバイルは配当利回りが高く、安定収入志向の投資家にとっては相対的に魅力が大きいとしている。
中国国内の通信サービス収入は21年に前年比8%増と、20年の前年比5.4%増から加速する見込み。主に企業のデジタル化を背景とした通信インフラのアップグレードが寄与する見通しという。BOCIはIDC(インターネットデータセンター)やクラウドコンピューティング、AI、さらに専用リース回線といった固定付加価値サービスの売り上げ増に加え、モバイル部門のARPUも回復すると予想。5Gサービスの浸透率は21年末に36%を超えるとみている。
20年には5Gプランの加入純増数が2億5,000万人に上ったにもかかわらず、モバイルサービス収入はほぼゼロ成長。通信業界のサービス収入の上乗せ分のほぼ100%を固定ライン事業が占め、成長のけん引役となった。ただ、BOCIは5Gの浸透に伴うデータ利用の35%の増加を見込み、モバイルARPUが21年1-3月に上向きに転じるとみる。
個別ではチャイナ・ユニコムを最有力視しているが、これは混合所有制改革(民間資本の導入)の実施やテクノロジー大手との合弁事業を原動力とした企業向け固定サービス事業の拡大が主な理由。この分野ではチャイナ・ユニコムが他2社をリードしており、20年には固定付加価値サービス収入が売り上げ全体の25%(19年は20.7%)を占める見込み。同収入の予想伸び率は前年比26.2%と、3社の中で最も高い数字となる。
通信キャリア3社の現在株価は、21年予想EV/EBITDA倍率で平均1.6倍、21年予想PER(株価収益率)も8.7倍(市場予想ベース)。世界の総合通信キャリアの平均値(6.3倍、16倍)、携帯通信キャリアの平均値(6.7倍、15.7倍)をいずれも大幅に下回る。3社は配当利回りも相対的に高く、21年予想で5.7%。世界同業平均の4.5%を上回る水準にある。
BOCIはマーケットの見方とは裏腹に、企業の先端技術(クラウドやIDCなど)の導入を背景とした固定付加価値サービスの拡大が、通信セクターの成長エンジンになるとの見方。キャリア3社の株価の先行きに対し、いずれも強気見通しを継続した。レーティング見直しにつながる潜在リスク要因としては、競争激化に伴う販売・マーケティング費の増大や5Gネットワークへの過剰投資による負担増が利益下押しにつながる可能性を挙げている。