日本株堅調は「グローバルグロースの正常化」を織り込む動き

 日経平均が上昇している要因として、「世界の景気敏感株」として注目されやすい特徴も挙げられます。「世界経済は2021年年央から正常化に向かう」とのシナリオを想定したトレード(売買)を受けた動きとも言えます。

 新型コロナの感染動向はいまだ予断を許さない状況ですが、株式市場は「半年から1年後を先読み(フォワード・ルッキング)する」との特性があります。昨春以降実施された大規模金融緩和、財政悪化をいとわない景気対策、年末以降のワクチン接種開始を受け、市場は景気回復に伴う業績回復を予想しています。

 同時に、景況感が早晩改善するにしても、サービス業不況で打撃を受けた雇用を支えるべく、各国中央銀行は金融緩和を続け、政府も財政支出拡大を実施すると考えられ、グローバルグロース(世界経済の成長率回復)に寄与する可能性が指摘されています。

 図表3は、世界経済全体と主要国(地域)別の実質GDP(国内総生産)成長率について、2019年の実績、2020年と2021年の見通し(市場予想平均)を示したものです。昨年のマイナス成長を経て、2021年はプラス成長に転じる予想が示されています(市場予想平均=民間エコノミストの予想平均)。

<図表3:世界の実質成長率はプラス転換する見通し>

*実質成長率見通しはエコノミスト予想平均
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年1月19日)

 特に世界経済回復をけん引する中国に注目です。国家統計局が18日に発表した2020年第4Q(10-12月期)の実質成長率は+6.5%となり、第3Q(7-9月期)の成長率(+4.9%)より加速しました。2020年のGDP規模は前年比実質成長率+2.4%の約101.6兆人民元(約1,627兆円)で着地し、2021年は+8%超の成長が見込まれています。

 中国政府は、新型コロナの感染拡大を早期に抑え込み、インフラ投資や金融緩和を拡大。不動産投資の活発化、企業部門の投資や輸出の回復が経済の持ち直しに寄与しました。個人消費支出の伸びが鈍い点に課題は残るものの、2020年を通じ主要国(地域)で唯一プラス成長を達成した経済情勢を反映して中国株式が堅調です。

 世界の機関投資家がベンチマークに使用することが多いMSCI指数ベースで中国株指数の1年前比上昇率は+39.9%と米国株指数(同上昇率+19.0%)や世界株指数(同上昇率+14.6%)を大きく上回っています(20日)。本年7月に「共産党創建100周年」を迎えるなか、中国政府は経済成長、不動産市況、株式相場の堅調(=個人資産の拡大)を維持したいと考えられます。

 英国調査機関(CEBR:経済ビジネスリサーチセンター)が12月26日に発表した予測によると、「従来予想より5年早い2028年にも中国のGDP規模が米国を抜き第1位となる見込み」とのことです。世界最大の総人口(約14億人)を誇る中国経済の成長が主要各国の外需や投資活動回復に与える影響を軽視できません。リスク要因としては、中国国内で局所的に新型コロナの感染がぶり返す兆しがあることです。移動制限が復活するなら、民間消費を含めた経済活動が再鈍化する可能性があり警戒したい要因です。