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 中央銀行(以下、中銀)のバランスシートとは中銀の持つ総資産を示し、市場に供給するお金を増やすと拡大します。コロナ禍の世界経済を支えるため各国中銀は大規模な金融緩和を実施しています。量的緩和に伴う『バランスシート拡大』は株式市場の大きな支えになったとみられ、米国株式市場では株価が史上最高値を更新して上昇しました。ここでは株価を支える今回の『バランスシート拡大』の推移をみていきます。

【ポイント1】中銀は量的緩和を再開、バランスシートを拡大

 コロナ禍で急減速した経済を支えるため、各国中銀は迅速に行動し極めて積極的な政策を講じました。FRB(米連邦準備制度理事会)は2020年3月から量的緩和とゼロ金利の復活、社債等を購入する異例の資金供給策を実施するなど素早く危機対応に転じました。量的緩和再開に伴い、FRBのバランスシートはわずか9カ月で4.3兆米ドルから2.4兆米ドル増加し、年末には6.7兆米ドルに急拡大しました。各国中銀も追随し、ECB(欧州中央銀行)も量的緩和を再開、日銀も3月以降『バランスシート拡大』ペースを上げました。

【ポイント2】『バランスシート拡大』は過去に例のないスピードと規模

 例えば、リーマン・ショックの後もFRBの量的緩和は行われましたが、2008年から6年かけて3.5兆米ドル程度の規模だったことと比べると、今回の『バランスシート拡大』はスピード、規模ともに驚異的なものであることがわかります。こうした金融緩和の下、経済の再開や新型コロナワクチン開発等を受けて世界株式の代表的な指数(MSCI ACWI)は3月下旬の安値から年末には70%超上昇し、過去最高値を更新しました。

【今後の展開】中銀の異例の『バランスシート拡大』が金融市場を支える

 世界経済が以前の水準に回復するには数年かかるとみられています。それでも株式市場が堅調さを保っているのは中銀の『バランスシート拡大』が潤沢な流動性を供給し、金融市場や世界経済を強力に支えているためと考えられます。2021年は、米国では経済の正常化が進めば年央以降のテーパリングを巡る議論が活発化する可能性はありますが、主要中銀の証券購入を通じた流動性供給は高水準を維持する見通しです。