ディスコ
1.2021年3月期3Q個別出荷額は前年比22.0%増、前期比7.6%増
2021年1月12日付けで、ディスコは2021年3月期3Q(2020年10-12月期)の個別売上高、個別出荷額の速報値を公表しました。それによれば、2021年3月期3Qの個別売上高は373億6,800万円(前年比28.5%増、前期比(今2Q比)5.5%減)となりました。
2020年3月期より装置の収益認識基準をそれまでの工場出荷基準から検収基準に変更したため(消耗品は引き続き工場出荷基準)、売上高は個別、連結ともに顧客の検収の進捗に左右されるようになりました。そこで出荷の実態を見るために個別出荷額の推移を見ると、今3Qは374億6,500万円(前年比22.0%増、前期比7.6%増)となりました。
個別出荷額は、今1Qに418億7,500万円の大きなピークを付け、今2Qに一旦348億1,000万円に減少しましたが、今3Qに再び増加しました。会社側によると、ダイサ(回路を描き込んだシリコンウェハを四角いチップに切り出す)、グラインダ(シリコンウェハの底面を薄く削る)は、5G関連市場の拡大によって、アジア向け量産用途中心に比較的高水準の出荷が続きました。また、消耗品(精密加工ツール)の出荷も堅調でした。
過去最大規模の半導体ブームが起きていること、先端半導体だけでなく、自動車向け、家電向けなどの汎用半導体も需要が増えていること、ディスコの業績は世界の半導体工場の稼働率に比例して上下する傾向があることを考えると、個別出荷額は再び上昇トレンドに入ったと思われます。
グラフ8 ディスコの個別売上高、個別出荷額
表6 ディスコ:個別売上高、個別出荷額
2.楽天証券の2021年3月期~2023年3月期業績予想を上方修正する
今3Qまでの個別売上高、個別出荷額の動きを見て、楽天証券では2021年3月期~2023年3月期連結業績予想を上方修正しました。
過去の売上高連単倍率が1.2倍前後であることから今4Qの連結売上高を予想し、それに従って営業利益、経常利益、当期純利益を予想しました。2021年3月期3Q連結決算(1月26日発表予定)は、会社予想の売上高383億円(前年比11.2%増)、営業利益88億円(同4.3%増)に対して、楽天証券では売上高450億円(同30.7%増)、営業利益125億円(同48.1%増)と予想します。
また2021年3月期は、前回の売上高1,670億円、営業利益450億円を今回は売上高1,760億円、営業利益490億円へ、2022年3月期は売上高1,950億円、営業利益570億円を売上高2,050億円、営業利益620億円へ、2023年3月期は売上高2,200億円、営業利益700億円を売上高2,300億円、営業利益730億円へ各々上方修正しました。
表7 ディスコの業績
3.今後6~12カ月間の目標株価を4万6,000円とする
今後6~12カ月の目標株価を4万6,000円とし、前回の3万8,000円から引き上げます。2023年3月期の楽天証券予想EPS 1,457.6円に、成長性と市場シェアの高さ(ダイサ、グラインダともに約80%で、世界中のほぼ全ての半導体後工程にディスコのダイサが置かれている)を考慮して想定PER30~35倍を当てはめました。
引き続き投資妙味を感じます。
TSMCの大型設備投資計画を評価し、日系半導体製造装置メーカー4社の目標株価を引き上げる
1.TSMCの大型設備投資計画はサプライズ
TSMCが2021年12月期に高水準の設備投資を行うことはあらかじめ予想出来ましたが、250~280億ドルという水準の大型投資計画はサプライズでした。実際には、日本、アメリカ、欧州で新型コロナ変異種が猛威を振るっている中で、計画通りに設備投資が進捗するか疑問もありますが、2021年のTSMCの設備投資の伸びが大きなものになることは確かです。
そしてTSMCの大型投資は、ファウンドリ事業に野心を持つサムスンの大型投資を引き起こすと思われます(TSMCがサムスンを突き放そうとしても、サムスンは引き下がらないと思われます)。要するに、半導体デバイスのブームが設備投資ブームにつながったということです。
2.日系半導体製造装置メーカー4社の業績予想と目標株価
この動きを日系半導体製造装置メーカー4社、東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、SCREENホールディングスの業績予想と目標株価に織り込んでみます(ディスコは前述の銘柄レポートで業績予想と目標株価を修正しました)。今回の半導体デバイスブーム、半導体設備投資ブームが2021年、2022年だけでなく、多少の調整を伴いながらも2023年も続く長期ブームになる可能性を考慮しました。
ただし、今は2021年3月期3Q決算発表前なので、今3Q決算の発表後、改めて各社の業績予想と目標株価を検討します。
東京エレクトロン
TSMCの大型投資の恩恵を受け易いのが前工程です。東京エレクトロンの2021年3月期~2023年3月期の楽天証券業績予想を上方修正し、今後6~12カ月間の目標株価を前回の4万4,000円から5万5,000円に引き上げます。楽天証券の2023年3月期EPS予想 2,206.2円に成長性を考慮した想定PER25倍を当てはめました。
表8 東京エレクトロンの業績
アドバンテスト
大型投資によって、回路を描き込んだシリコンウェハがより多く半導体工場から出荷されるようになるため、TSMCの大型投資は、テスタ、ダイサなどの後工程にも恩恵があると思われます。アドバンテストの2022年3月期、2023年3月期楽天証券業績予想を引き上げます。目標株価も、前回の9,300円から1万2,000円に引き上げます。楽天証券の2023年3月期予想EPS 437.2円に成長性を考慮した想定PER25~30倍を当てはめました。
表9 アドバンテストの業績
レーザーテック
私はもともと、3ナノの設備投資は5ナノと同じくらいに大きなものになると考えており、レーザーテックの業績予想もこの考え方に沿っています。このため、今回は前回の業績予想を維持します。
ただし、想定PERの考え方は変えます。TSMCの動きを見ると、7ナノ→5ナノ→3ナノと継続して研究開発と設備投資を行っており、3ナノの後は2ナノに向かうと思われます。レーザーテックのEUV用マスク欠陥検査装置「ACTIS A150」は主に3ナノの生産ラインに対応したものであり、3ナノへの設備投資が大きくなるとその恩恵を受けると予想されます。また、その進化型あるいは改良型が2ナノに対応すると予想されます。その場合、レーザーテックは長期高率の利益成長が可能になると思われます。
その場合、想定するPER水準は高くても構わないと考えられます。今回は楽天証券の2023年6月期予想EPS 341.5円に対して、2023年6月期の営業増益率44.8%にPEG1.0~1.5倍を当てはめて想定PERを約60倍とし、目標株価を2万円としました。前回の1万5,000円から引き上げます。
表10 レーザーテックの業績
SCREENホールディングス
SCREENホールディングは、前期までに起こった諸問題を解決し、今期から通常の業績に戻っていると思われます。ただし、2021年3月期3Qも半導体製造装置市場の成長に沿った成長が実現できているか、確認したいと思います。そのため、業績予想は変更しません。
目標株価は、楽天証券の2023年3月期予想EPS 439.2円に成長性を考慮した想定PER25倍を当てはめ、1万1,000円としました。前回の9,000円から引き上げます。
表11 SCREENホールディングスの業績
今後6~12カ月間の目標株価をまとめると以下の如くです。
東京エレクトロン 前回4万4,000円→今回5万5,000円
アドバンテスト 前回 9,300円→今回1万2,000円
レーザーテック 前回1万5,000円→今回 2万円
SCREENホールディングス 前回 9,000円→今回 1万1,000円
ディスコ 前回3万8,000円→今回4万6,000円
東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、SCREENホールディングス、ディスコの5社については、引き続き中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:TSMC(TSM)、マイクロン・テクノロジー(MU)、ディスコ(6146)、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)、SCREENホールディングス(7735)