マイクロン・テクノロジー

1.2021年8月期1Qは12.2%増収、67.2%営業増益

 マイクロン・テクノロジー(ティッカーシンボルはMU、Nasdaq上場)の2021年8月期1Q(2020年9-11月期)は、売上高57億7,300万ドル(前年比12.2%増)、営業利益8億6,600万ドル(同67.2%増)となりました。

 今1Qは前年比では好調でしたが、前4Qの売上高60億5,600万ドル、営業利益11億5,700万ドルと比較すると減収減益となりました。これはインターネットデータセンター用サーバー向けDRAM需要が前4Q(2020年6-8月期)に比べ今1Qは弱かったためです。NANDとSSDは、企業向けは軟化したものの、クラウドサービス向けが伸びました。

 5Gスマホ向けは、ファーウェイから他メーカーへの転換がうまく進んだため、増加しました。パソコン向けも増加しました。また、自動車向けの中でEV(電気自動車)向けが新たな有望分野になってきたもようです。

 メモリ市況を見ると、前4Qから今1Qにかけて、DRAMの大口価格、スポット価格が緩やかに下落しました。NANDの大口価格も同様に緩やかに下落しました。これも業績にネガティブに効いたと思われます。

表4 マイクロン・テクノロジーの業績

株価(NASDAQ)    81.30ドル(2021年1月14日)
時価総額    90,650百万ドル(2021年1月14日)
発行済株数    1,115百万株
単位:100万ドル、%
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済株数は完全希薄化前。

表5 マイクロン・テクノロジー:テクノロジー別売上高

単位:100万ドル、%
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ4 マイクロン・テクノロジーの設備投資:四半期ベース

単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

2.今2Qは今1Q比で実質増収増益が期待できよう

 会社側ガイダンスによれば、2021年8月期2Q(2020年12月~2021年2月)は、売上高56~60億ドル(前年比16.7~25.1%増)、営業利益4億8,700万ドル~6億5,300万ドル(同10.7~48.4%増)となる見込みです。売上高予想には、昨年12月に台湾で起きた停電と地震による減収分が含まれています。また、在庫評価方法の変更と在庫費用の増加による3億ドルの営業減益分を織り込んでいます。このため、見掛け上は今1Q比営業減益になる見込みですが、実態は営業増益になる可能性があります。

 DRAMとNANDの需要を見ると、会社側では2020年暦年よりも2021年暦年のほうが強い需要を予想しています。DRAMはすでに市場が底打ちしており、新型コロナワクチン接種の拡大による景気回復と、データセンター向け、5Gスマホ向け、パソコン向け、新型ゲーム機向けなどの増加がDRAM需要をけん引すると見ています。ただし、微細化を進めるための設備投資を予定しているため、マイクロンのDRAM事業の成長率は業界の成長率より低くなると予想されます。

 なお、最新鋭の高速DRAM「DDR5」への転換は、マイクロンでは今3Qまたは4Qから本格化すると予想されます。

 NANDも2021年は順調な成長が期待できそうです。需要は順調に拡大しており、設備には十分余力があります。

 DRAM市況も回復してきました。グラフ7のようにDRAMスポット価格が反発しています。5Gスマホ、高性能パソコン、データセンター用サーバーの生産、販売好調に加え、昨年12月に起きたマイクロンの停電事故が心理的な上昇要因になっているもようです。DRAM大口価格もやや回復しています(グラフ6)。この動きが今後も続くかどうかが焦点です。なお、NAND市況は今のところ軟化していますが(グラフ5)、マイクロンの業績に与える影響は軽微と思われます。

 このような状況を踏まえて、楽天証券では2021年8月期、2022年8月期業績を予想しました。2021年8月期は前回と同じ売上高250億ドル(前年比16.6%増)、営業利益37億ドル(同23.2%増)、2022年8月期は売上高310億ドル(同24.0%増)、営業利益60億ドル(同62.2%増)と予想します。DRAM、NANDともに順調に伸びると予想します。

グラフ5 NAND型フラッシュメモリの市況(2017年5月29日から)

単位:ドル、国内大口需要家渡し、TLC(注:2017年5月30日付で従来の多値品がTLCに変更された)、出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ6 DRAMの市況

単位:ドル、国内大口需要家渡し、4ギガビット(2018年6月26日までDDR3、それ以降はDDR4)、出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

グラフ7 DRAMのスポット市況

単位:ドル、小口渡し、現金、出所:日本経済新聞主要相場欄より楽天証券作成、注:2018年6月29日までは4ギガビットDDR3型、それ以降は同DDR4型

3.今後6~12カ月間の目標株価を65ドルから110ドルへ引き上げる。

 今後6~12カ月間の目標株価を前回の65ドルから110ドルへ引き上げます。楽天証券の2022年8月期予想EPS 4.84ドルに、半導体メモリが成長サイクル入りしたことを考慮した想定PER 20~25倍を当てはめました。引き続き投資妙味を感じます。