金投資。一歩目は“イメージ”でOK。2歩目以降は“実態把握”が必要

 金(ゴールド)は、大衆が負の感情を募らせれば募らせるほど、“last resort(最後のよりどころ)”として、魅惑的な輝きを放つと、書きました。この点は、筆者が考える、5つの金(ゴールド)市場を取り巻くテーマの1つ、“有事のムード”と直結するものです。

 他のテーマの1つ、“代替資産”は、株や不動産などの資産を保有している人が、保有する資産の価値が目減りして不利益を被ることを回避するために、金(ゴールド)を買う行為を、そして、“代替通貨”は、ドルや他の主要国通貨を保有している人が、保有する通貨の価値が目減りして不利益を被ることを回避するために、金(ゴールド)を買う行為を、想定しています。

“有事のムード”が強まっている時は、株や不動産、ドルなどを持っていない人でも、金(ゴールド)を意識する時、とも言えます。しばしば、コロナ禍の折、不安感が強まっているため、これまで投資をしたことがなかった人が、金(ゴールド)を買うケースが増えている、などと言われるのは、新型コロナ起因の、大衆が負の感情を募らせる要因が複数存在すること、つまり、社会で“有事のムード”が強まりやすくなっていることが、要因と考えられます。

 大衆が“不安”や“いら立ち”を募らせる時、つまり“有事のムード”が強まる時に、金投資を始めるケースは多いのだと思います。ニュースを見て生じる“直観”、“肌感覚”、“イメージ”などが、金投資の第一歩になっていると、考えられます。

 確かに、“有事のムード”は、金(ゴールド)価格を押し上げる要因になり得るため、その“直観”、“肌感覚”、“イメージ”はある意味、“1歩目”としては、正しいかもしれません。では“2歩目以降”としては、どうでしょうか。

 以下は緊急事態宣言が発出された日(2021年1月7日)の夕方から、1月12日(火)未明までの、国内外の金価格の推移です。

図:国内外の金(ゴールド)価格の推移(2021年1月7日夕方から12日未明)
単位:NY金先物 ドル/トロイオンス 大阪金先物 円/グラム

出所:ブルームバーグより筆者作成

 国内外ともに、金(ゴールド)価格が下落していることがわかります。日本で新型コロナの感染拡大抑止のための緊急事態宣言が発出・施行されても、米国で政局が不安定化しても、北朝鮮で核開発が進展する懸念が生じても、つまり“直観”、“肌感覚”、“イメージ”で価格が上昇すると感じる材料があったとしても、金(ゴールド)価格は下落することがあるわけです。

 金投資における、“2歩目以降”は、“有事のムード”以外のテーマにも、留意する必要がありそうです。