3.AWSを使ったネットワーク構築とシステム構築が各国に浸透中
世界最大の商用クラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」が好調です。AWSは、アマゾンが日米欧その他地域に構築した大規模クラウドネットワーク(インターネットをベースとしたネットワーク)を使い、計算処理、ストレージ、データベースサービスなどを行うサービスです。AWSが認定しているパートナー(システムインテグレーター、ネットワークインテグレーター)も多く、自前でネットワーク構築とシステム構築を行うよりも早く安く信頼性の高いシステムが構築できます。
クラウドサービス市場全体でのアマゾンの市場シェアは2020年4-6月期で1位33%。2位はマイクロソフト(Azure(アズール))18%、3位はグーグル9%となっています。アマゾンは、大手からスタートアップまでの企業、政府機関、学校・研究機関と幅広い顧客層を持っています。
ちなみに、日本でもAWSが普及していますが、2017年に三菱UFJフィナンシャル・グループがシステムのAWSへの移行を表明して話題になりました。現在までに一部のシステムのAWSへの移行が完了しているもようです。AWSにも短所はあり、インターネット上にネットワークを置くため、専用線に比べるとセキュリティには問題が生じる場合があります。その反面、安いこと、各国で実績を重ねてきたため、各業種の様々なシステムのモデルが揃っていることが長所です。
AWS事業は、営業利益率の高さも特色です。2019年12月期は各四半期25~28%台の営業利益率でしたが、2020年12月期は同じく30%台に上昇しています。ネット通販事業もそうですが、「規模の利益」が働いていると思われます。
新型コロナ禍前もその中でも、AWSの業績は好調です。新型コロナ禍の中では、テレワーク、オンラインエンタテインメント、オンライン学習、オンライン行政等の新しいビジネスモデル、学習モデル、行政モデルの構築が急がれているため、クラウドサービスは一層人気になっているもようです。ブームに乗っていると思われ、中長期で高成長が期待できます。
グラフ3 アマゾン・ドット・コム:AWS事業の業績推移
グラフ4 アマゾン・ドット・コム:全社業績
グラフ5 アマゾン・ドット・コム:セグメント別売上高営業利益率
4.2020年12月期、2021年12月期とも業績好調が予想される
2020年12月期3Q決算時に会社側が提示した4Q業績ガイダンスによれば、2020年12月期4Qは売上高1,120~1,210億ドル(前年比28.1~38.4%増)、営業利益10~45億ドル(同74.2%減~16.0%増)となる見込みです。この予想の中には、新型コロナ関連費用約40億ドルが織り込まれています。
この会社予想と2020年クリスマス商戦の動き(例えば、クレジットカードのマスターカードが発表した10月11日~12月24日までの米国の小売売上高は、前年比3%増。このうちオンライン販売は、同49%増)を考慮して、楽天証券では2020年12月期通期を売上高3,780億ドル(前年比34.7%増)、営業利益200億ドル(同37.5%増)と予想します。
また、2021年12月期も引き続き業績好調が予想されるため、売上高4,900億ドル(同29.6%増)、営業利益270億ドル(同35.0%増)と予想します。
5.今後6~12カ月間の目標株価を4,300ドルとする。
今後6~12カ月間の目標株価を4,300ドルとします。楽天証券の2021年12月期予想EPS 48.70ドルに、2021年12月期の予想営業増益率35%に対してPEG2~3倍、想定PER70~105倍を当てはめました。
高い評価が続くことになりますが、これはネット通販、AWSの両方で世界展開するための十分な規模と人材を持っていることに対するプレミアムを認めてよいと思われること、売上高の規模が大きくなっているため、営業利益率が1%変化するごとに、40~50億ドルの営業増益が期待でき、今後も大幅増益が期待できること(レバレッジが期待できること)に対するプレミアムも認めてよいと思われることによります。
中長期で投資妙味を感じます。
なおリスクは、アメリカ、EU、日本などで進められている個人情報の使用規制、公正取引規制の強化などです。これについては、基本的に規制強化の方向にあると思われるため、各国の規制当局と政治の動きに注意する必要があります。
(2020年12月期決算発表は、1月28日(木)。)