毎月分配型ファンドの「理にかなった」利用法

 毎月分配型の投資信託には、メリットもあります。まとまった金融資産を保有しているものの、毎月の生活費が年金ではまかなえず、資産をとり崩して生活費に充てていく必要がある場合、毎月分配型ファンドを持っていれば、毎月のキャッシュフローを補うことができます。

 私は、CFA(米国の証券アナリスト)資格を保有しています。私が受けた検定試験の問題の1つを今でも覚えています。ある富裕個人の年齢、家族構成、金融資産保有額、年間の生活費などのデータが与えられ、その個人にとって最適な運用ポートフォリオを組んで提案するという問題が出ていました。

 私が事前に受講した講習会では、「そういう問題が出た時、金利や配当金などの年間受取額が、年間に必要な生活費に一致するように組むのが望ましい」と教えられました。したがって、私もそのような方針で解答を作成しました。

 ただ、私は当時、そのような解答に納得していませんでした。「生活費が必要になれば、いつでも自由に金融資産を換金すればいいではないか」と考えていました。ただ、今になってみると、その考えは浅かったと思います。

 多くの人は、月々いくらと決められた範囲で、生活費をコントロールするのに慣れています。たくさんある金融資産から自由に換金して生活費に充てるスタイルだと、支出のコントロールが難しくなります。だから、理想的には、金利や配当金の年間受取額が、年間支出に一致するようにポートフォリオを組むのが望ましいわけです。

 現在、日本の金利水準は、きわめて低くなりました。残念ながら、金利や配当金だけで生活費をまかなうのは、難しくなってきています。ただ、退職金や遺産相続で、そこそこの額の金融資産を持っている人もいます。

 毎月、年金だけでは不足する生活費を、保有する金融資産を取り崩すことでまかなう必要がある人が増えてきていると思います。

 そういう人が、月々のキャッシュフローを補う目的で、毎月分配型の投資信託を購入するのは、理にかなった行動です。それならば、「分配金受取型」を選択すべきです。

 実際、毎月分配型ファンドに投資して、分配金受取型を選択している個人もいます。それを生活費に充てるならば、それこそが、本来の毎月分配の使い方となります。ところが、「分配金受取型」を選択している投資家によく見られる行動は、分配金を貯めておいて、一定額に達したら、また別の毎月分配型ファンドを購入するという行動です。

 見かけの分配金利回りの高さに引きずられて、投資している個人が多いから、そういう非合理な行動を取ることになるのだと思います。