今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「国内株式」と「外国株式」、そして「投資信託」を選択したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、金先物取引、原油先物取引、その他の商品先物、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「国内株式」「外国株式」「投資信託」を選択したお客様の割合の推移 ※複数回答可

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年11月の調査で「国内株式」を選択した人の割合は57.34%、「外国株式」を選択した人の割合は44.74%、「投資信託」を選択した人の割合は37.20%でした。足元、「今後、投資してみたい金融商品」として最も選ばれているのは、「国内株式」で、その後に「外国株式」、「投資信託」が続きます。

「国内株式」は、統計開始(2018年10月)以降、2度、50%を割れました。いずれも2020年で、2月に49.1%、7月に49.8%となりました。

 新型コロナの感染が日本国内で目立ち始めたこと(2月)、緊急事態宣言が解除された後、感染者が増え始めたこと(7月)など、“国内”の感染状況が悪化し、不安を肌で感じる状況となったことが、「国内株式」を投資してみたいと考える人の割合を低下させた可能性があります。

 また、同時に、特に3月の幅広い銘柄が大幅下落した“新型コロナ・ショック”後、ハイテク関連の銘柄を中心に価格が大きく上昇した外国株式の人気が上昇したことが、相対的に「国内株式」を投資してみたいと考える人の割合を低下させた可能性があります。

 とはいえ、「国内株式」が50%を割ったのは、2度だけです。先述のとおり、11月は57%台を回復しています。足元、国内の感染状況が悪化し、外国株式が上昇していますが、50%を割っていません。

 このように考えれば、強い“常識外”、“想定外”が起きない限り、「国内株式」を選択する人の割合が50%を割れることはないのかもしれません。つまり、回答者の2人に1人は、強い“常識外”“想定外”が起きない限り、「国内株式」を選択する、と言えそうです。

 この点は、外国株式が跋扈(ばっこ)する中でも、「国内株式」が根強い人気を維持していることを示す、定量的な情報であると、筆者は考えています。

「外国株式」は、2016年6月の英国のEU離脱をめぐる国民投票によって強まった世界規模の不安をきっかけに、「国内株式」と「投資信託」の割合が急低下したのを横目に、上昇しはじめ、今もなお、そのトレンドを維持しています。

 こうした中、2020年に入り、「外国株式」が「投資信託」を上回ることが常態化しています。これは、日本国内の個人投資家の間で、「外国株式」が「国内株式」に次ぐ人気の投資先として、不動の地位を確実なものにしたことを意味すると、考えられます。

 1位「国内株式」、2位「外国株式」、3位「投資信託」。2020年はこれまで、この順位に変動はありませんでした。今後、これらの順位に変動は生じるのでしょうか。もし変動が生じるとすれば、どの投資先が上下し、その上下は何がきっかけとなるのでしょうか。

 先述のとおり、「国内株式」が50%を割れることは、なかなかないと考えられます。コロナで負ったダメージは、徐々にではあるものの、有効性の高いワクチンによって癒されていくと考えられるため、“常識外”“想定外”の事象が起きない限り、50%以上を維持する可能性は高いと考えられます。

 順位に変動があるとすれば、「外国株式」がさらに躍進し、(50%以上を維持する)「国内株式」を超えることで起きると考えられます。新型コロナのワクチン接種が一般化するタイミングの差が、順位変動の一因になる可能性があると、筆者は考えています。

 一般人へのワクチン接種が始まるタイミングは、日本よりも欧米諸国の方が先とみられます。このため、欧米人が、日本人よりも先に、ワクチンの恩恵を享受することになります。

 ワクチンの恩恵を先に享受した“外国”と、そうでない“国内”とで、差が生じ、この差が投資してみたいと考える投資先にも影響し、「外国株式」が「国内株式」を上回る可能性があると、筆者は考えています。

 次回以降の調査で、統計開始来初めての“国内・外国の逆転”は起きるのでしょうか。ワクチンの一般化の状況とともに、要注目です。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年11月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年11月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成