シノプシス
1.半導体回路設計用ソフトウェアの最大手
半導体回路設計用ソフトウェア(EDA。Electronic design automation)は半導体や各種電子回路の設計を自動化するソフトウェアです。スマートフォンや各種電子機器に搭載される半導体(ロジック半導体)が複雑になるにつれて、EDAの重要性は増しています。EDAは半導体製造装置、半導体素材と並んで半導体産業にとってなくてはならない存在になっているのです。
この業界でのトップがシノプシス(SNPS、Nasdaq上場)、2位がケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS、Nasdaq上場)、3位がメンター・グラフィックス(シーメンス子会社、未上場)で、この3社が3強となっています。特に、シノプシスとケイデンス・デザイン・システムズのソフトウェアラインナップが優秀と言われています。
この3社ともアメリカ企業であり、アメリカが半導体回路設計用ソフトウェアの世界標準を握っていると言えます。
2.2020年10月期4Qは20.4%増収、50.8%営業増益
シノプシスの2020年10月期4Q(2020年8-10月期)は、売上高10億2,500万ドル(前年比20.4%増)、営業利益1億9,600万ドル(同50.8%増)となりました。好業績でした。
プロダクトグループ別に見ると、2020年10月期4Qは主力のEDAが売上高5億8,100万ドル(同18.8%増)と順調に伸びました。また、IP&システムインテグレーション(インターフェース、セキュリティ関連ソフトとそれらを使ったシステムインテグレーション)は3億5,200万ドル(同27.5%増)と好調でした。
地域別では2020年10月期4Qは、売上高の52%を占める北米向けが売上高5億3,700万ドル(前年比19.3%増)と順調に伸びました。2020年10月期3Q比でも北米向けは増加しました。中国を含むアジア太平洋向けも2億600万ドル(同28.8%増)と好調でした。その他の地域向けも順調に伸びました。
なお、シノプシスは5月からファーウェイとの取引を停止しており、ソフトウェア更新も許可していないため、アジア太平洋向けの伸びは中国の民族系半導体メーカーや地方政府によるソフト購入が寄与していると思われます。アジア太平洋向けは2020年10月期3Qに2Q比で大きく伸び、4Qには減少しましたが、なお高水準です。
これによって、2020年10月期通期は、売上高36億8,500万ドル(同9.6%増)、営業利益6億2,000万ドル(同19.2%増)となりました。
シノプシスのようなEDA会社は、半導体製造装置メーカーと比べるとアメリカ向け売上比率が高く、相対的に地政学的リスクは低いと言えます。
表7 シノプシスの業績
表8 プロダクトグループ別売上高(四半期)
表9 プロダクトグループ別売上高(年度)
表10 シノプシスの地域別売上高
3.2021年10月期も業績順調が予想される
会社側の2021年10月期1Qガイダンスは、売上高9億3,500万ドル~9億6,500万ドル(前年比14.1~23.7%増)、営業利益1億6,800万ドル~1億8,000万ドル(同90.9~104.5%増)、2021年10月期通期のガイダンスは、売上高40億ドル~40億5,000万ドル(同8.5~9.9%増)、営業利益7億7,400万ドル~7億7,900万ドル(同24.8~25.6%増)です。
一方楽天証券では、5Gスマホ、パソコン、サーバーだけでなく、自動車、産業用機器の分野でも半導体需要が拡大していることから、ロジック半導体の設計増加を予想しています。シノプシスの業績も会社側ガイダンス以上に勢いがあると予想しています。そのため、2021年10月期業績予想を、売上高41億ドル(同11.3%増)、営業利益8億ドル(同29.0%増)、2022年10月期予想を売上高46億ドル(同12.2%増)、営業利益10億ドル(同25.0%増)とします。
4.今後6~12カ月間の目標株価を290ドルとする。
今後6~12カ月間の目標株価を290ドルとします。半導体景気が2022年も続くと想定して、2022年10月期楽天証券予想EPS5.73ドルに成長性を考慮した想定PER50~55倍を当てはめました。PERは低くはありませんが、成長期待が強く投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:アプライド・マテリアルズ(AMAT、Nasdaq)、シノプシス(SNPS、Nasdaq)