毎週金曜日夕方掲載
本レポートに掲載した銘柄:アプライド・マテリアルズ(AMAT、Nasdaq)、シノプシス(SNPS、Nasdaq)
アプライドマテリアルズ
1.世界最大の半導体製造装置メーカー
今回はアメリカの半導体関連企業2社、アプライドマテリアルズ(ティッカーシンボルはAMAT、Nasdaq上場)とシノプシス(SNPS、Nasdaq上場)を取り上げます。まず、アプライドマテリアルズから。
アプライドマテリアルズは世界最大の半導体製造装置メーカーです。前工程装置の重要企業であり、前工程の重要装置、プラズマCVD(ウェハ表面にプラズマを使って成膜する。市場シェア53%)、スパッタリング装置(金属をイオン化してウェハ表面に成膜する。同推定約70%)、CMP装置(化学機械研磨。ウェハ表面を平滑化する。同推定約50%)などで過半数の市場シェアを維持しています。
表1 世界の半導体製造装置メーカートップ10
表2 半導体製造装置の主要製品市場シェア(2019年)
2.2020年10月期4Qは24.9%増収、48.5%営業増益
アプライドマテリアルズの2020年10月期4Q(2020年8-10月期)は、売上高46億8,800万ドル(前年比24.9%増)、営業利益12億8,300万ドル(同48.5%増)となりました。四半期としては過去最高の売上高、営業利益でした。
セミコンダクター・システムズ(半導体製造装置)の2020年10月期4Q売上高は30億7,000万ドル(前年比33.4%増)、営業利益は10億5,900万ドル(同65.2%増)と好調でした(表4)。セミコンダクター・システムズの用途別売上構成を見ると、ファウンドリ(半導体受託生産業者)・ロジックその他向けが58%と最も多く、DRAM、フラッシュメモリ(NAND等)向けが各々21%でした(2019年10月期4Qも同じ)。2020年10月期3Qのファウンドリ・ロジックその他の売上構成比も55%なので、前期はファウンドリの設備投資増加にけん引されました。ただし、DRAM、NANDも一定の投資がありました。
2020年10月期4Qの地域別売上高を見ると(表6)、2020年10月期3Qとの比較では韓国向け以外が増加しました。韓国向けも前年比では52.7%増となりました。これは、DRAM、NAND向けだけでなく、サムスンが注力しているファウンドリ向け製造装置が増加したためと思われます。
また中国向けは2020年10月期3Q14億7,000万ドル→2020年10月期4Q15億7,600万ドルと高水準でした。これもファウンドリ・ロジックその他向けが中心と思われますが、メモリ向け製造装置も含まれていると思われます。西側半導体メーカーからのファーウェイ向け半導体輸出は9月15日以降ほぼ停止となりましたが、9月14日までに半導体だけでなく、半導体製造装置でも中国半導体メーカー各社による駆け込み調達があったと思われます。
これによって、2020年10月期通期は、売上高172億200万ドル(同17.8%増)、営業利益43億6,500万ドル(同30.3%増)となりました。
表3 アプライドマテリアルズの業績
表4 アプライドマテリアルズ:セグメント別業績(四半期)
表5 アプライドマテリアルズ:セグメント別業績
表6 アプライドマテリアルズの地域別売上高
3.2021年10月期1Qの会社側売上高ガイダンスは前年比14.1~23.7%増。2021年10月期も業績好調が予想される。
2021年10月期について、会社側は1Qの業績ガイダンスを示しています。それによれば、2021年10月期1Q売上高は、47億5,000万ドル~51億5,000万ドル(前年比14.1~23.7%増)となる見込みです。2020年10月期4Qに比べて増収になる見込みであり、2021年10月期も好業績が予想されます。
リスクは2020年10月期に大きく伸びた中国向けの反動があるのではないかということですが、半導体設備投資の基調が強く、台湾、韓国、アメリカ等の設備投資増加で補うことが期待できます。
そのため楽天証券では、アプライドマテリアルズの2021年10月期を売上高205億ドル(前年比19.2%増)、営業利益55億ドル(同26.0%増)、2022年10月期を売上高240億ドル(同17.1%増)、営業利益67億ドル(同21.8%増)と予想します。引き続き好業績が続くと予想されます。
4.今後6~12カ月間の目標株価を110ドルとする。
今後6~12カ月間の目標株価を110ドルとします。楽天証券の2021年10月期予想EPS 4.95ドルに成長性を考慮して想定PER20~25倍を当てはめました。中長期で投資妙味を感じます。
なお、半導体デバイスと半導体製造装置セクターの今後の見方については、楽天証券投資WEEKLY2020年11月27日号を参照してください。
シノプシス
1.半導体回路設計用ソフトウェアの最大手
半導体回路設計用ソフトウェア(EDA。Electronic design automation)は半導体や各種電子回路の設計を自動化するソフトウェアです。スマートフォンや各種電子機器に搭載される半導体(ロジック半導体)が複雑になるにつれて、EDAの重要性は増しています。EDAは半導体製造装置、半導体素材と並んで半導体産業にとってなくてはならない存在になっているのです。
この業界でのトップがシノプシス(SNPS、Nasdaq上場)、2位がケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS、Nasdaq上場)、3位がメンター・グラフィックス(シーメンス子会社、未上場)で、この3社が3強となっています。特に、シノプシスとケイデンス・デザイン・システムズのソフトウェアラインナップが優秀と言われています。
この3社ともアメリカ企業であり、アメリカが半導体回路設計用ソフトウェアの世界標準を握っていると言えます。
2.2020年10月期4Qは20.4%増収、50.8%営業増益
シノプシスの2020年10月期4Q(2020年8-10月期)は、売上高10億2,500万ドル(前年比20.4%増)、営業利益1億9,600万ドル(同50.8%増)となりました。好業績でした。
プロダクトグループ別に見ると、2020年10月期4Qは主力のEDAが売上高5億8,100万ドル(同18.8%増)と順調に伸びました。また、IP&システムインテグレーション(インターフェース、セキュリティ関連ソフトとそれらを使ったシステムインテグレーション)は3億5,200万ドル(同27.5%増)と好調でした。
地域別では2020年10月期4Qは、売上高の52%を占める北米向けが売上高5億3,700万ドル(前年比19.3%増)と順調に伸びました。2020年10月期3Q比でも北米向けは増加しました。中国を含むアジア太平洋向けも2億600万ドル(同28.8%増)と好調でした。その他の地域向けも順調に伸びました。
なお、シノプシスは5月からファーウェイとの取引を停止しており、ソフトウェア更新も許可していないため、アジア太平洋向けの伸びは中国の民族系半導体メーカーや地方政府によるソフト購入が寄与していると思われます。アジア太平洋向けは2020年10月期3Qに2Q比で大きく伸び、4Qには減少しましたが、なお高水準です。
これによって、2020年10月期通期は、売上高36億8,500万ドル(同9.6%増)、営業利益6億2,000万ドル(同19.2%増)となりました。
シノプシスのようなEDA会社は、半導体製造装置メーカーと比べるとアメリカ向け売上比率が高く、相対的に地政学的リスクは低いと言えます。
表7 シノプシスの業績
表8 プロダクトグループ別売上高(四半期)
表9 プロダクトグループ別売上高(年度)
表10 シノプシスの地域別売上高
3.2021年10月期も業績順調が予想される
会社側の2021年10月期1Qガイダンスは、売上高9億3,500万ドル~9億6,500万ドル(前年比14.1~23.7%増)、営業利益1億6,800万ドル~1億8,000万ドル(同90.9~104.5%増)、2021年10月期通期のガイダンスは、売上高40億ドル~40億5,000万ドル(同8.5~9.9%増)、営業利益7億7,400万ドル~7億7,900万ドル(同24.8~25.6%増)です。
一方楽天証券では、5Gスマホ、パソコン、サーバーだけでなく、自動車、産業用機器の分野でも半導体需要が拡大していることから、ロジック半導体の設計増加を予想しています。シノプシスの業績も会社側ガイダンス以上に勢いがあると予想しています。そのため、2021年10月期業績予想を、売上高41億ドル(同11.3%増)、営業利益8億ドル(同29.0%増)、2022年10月期予想を売上高46億ドル(同12.2%増)、営業利益10億ドル(同25.0%増)とします。
4.今後6~12カ月間の目標株価を290ドルとする。
今後6~12カ月間の目標株価を290ドルとします。半導体景気が2022年も続くと想定して、2022年10月期楽天証券予想EPS5.73ドルに成長性を考慮した想定PER50~55倍を当てはめました。PERは低くはありませんが、成長期待が強く投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:アプライド・マテリアルズ(AMAT、Nasdaq)、シノプシス(SNPS、Nasdaq)
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